笑顔の裏側ー5 ページ14
「とにかく、杏南さんの話はもうしないで」
覇気のない声でそう言ったゆづは、うつむいてティーカップを見つめている。
こんなに落ち込んでいるゆづを見るのは初めてだ。
結婚に恋愛感情はいらないというのがゆづの信条。それでも、会っているうちに館花さんに好意を抱く可能性はある。
だって、あんなに魅力的な女性だもん。
ゆづがいくら恋愛に興味がないといっても、男性なら惹かれて当然。
だとしたら、ますます破局の理由が謎だわ。
さっきはゆづが館花さんにひどいことをしたんじゃないかって突っ込んでしまったけど、紳士で優しいゆづに限ってそれはありえない。
館花さんもゆづをただのお見合い相手ではなく、少なからず好意があるから、チョコを手作りしたり、今回だってゆづの部屋に来ようと思ったんじゃないのかな。
……結局、他人の恋愛事情なんて周りにはわからないし、私が悩んでもしょうがないか。
「ごめんね、ゆづ」
ゆづに悪いことしちゃった。
「は? なんでAが謝るの?」
「デリカシーないこと聞いたから」
今日、ゆづがちょっと挙動不審でボーっとっしているのは、てっきり館花さんとうまくいって浮かれているのかと勘違いしてしまった。
まさかその反対になってるなんて……。
「元気だしてね。ゆづなら、すぐ他に素敵な人が見つかるよ」
「……おまえにだけは言われたくねー」
しんみりした空気を変えたくて明るく励ますと、ゆづにドスのきいた声で返された。
しまった、プライドを傷つけた?
あー、どうすれば、ゆづを元気づけられるの。
暗い顔をしているゆづを前に、私まで気持ちが沈んでしまう。
女友達の失恋を慰めたことは何度かある。でも、ここまで仲良くなった男友達はゆづが初めてだし、男心がわからなくてどうするのが正解なのか見当もつかなかった。
ゆづが落ち込んでいるのを眺めることしかできない自分が悲しい。
私が辛いときは、ゆづの言葉で励まされたのに。
「……ゆづ」
「なに?」
「どうしたら、ゆづを元気にできる?」
「……、……」
「友達として、私にできることあるかな?」
「…………」
直接聞いたほうが早いと思ったのに、ゆづの眉間の皺がさらに深くなった。
また、失敗?
「―――それよりさ、俺もAに聞きたいことがあんだよね」
すると、ゆづが表情を変えて、おもむろに私を見た。
「私に? なあに?」
心当たりがなくて、私は首を傾げた。
212人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
エミル(プロフ) - ころねさん» キュンキュンしてもらえて、嬉しいです♡ すっかり可愛い羽生さんになってしまいましたが、しばらくこの状態が続きます(笑) (2022年11月28日 22時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
ころね(プロフ) - うわ〜キュンキュンします♡赤面する羽生さん、かわいすぎる(^^)でももどかしい! (2022年11月28日 22時) (レス) @page37 id: 800fd7d527 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 璃子さん» 二人の距離が縮まればいいなーと思いつつ、書いていますが……まだしばらく友達の予定(笑) (2022年11月18日 22時) (レス) @page27 id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
璃子(プロフ) - わぁぁ…ここで待て!ですか!!どうなっちゃうの?気になる〜〜 (2022年11月17日 22時) (レス) @page27 id: 9bf38dcb2c (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 璃子さん» 璃子さん、ありがとうございます。ライビュは大きな画面で羽生さんを観ることができるのがいいですよね。ドアップになるたび、変な声が出そうになるけど(^_^;) 可愛い羽生さんは、書いていて楽しいです。しばらく恋に翻弄されてもらう予定(笑) (2022年11月1日 22時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:エミル | 作成日時:2022年10月25日 21時