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うん、しかたがないよ。
悲しいけれど、こういう未来も想定はしていた。
「転職して恵まれた環境に変わったからって、用済みとか、あんたの彼氏ってひどくない!?」
私の彼氏が“羽生結弦”だと知らない親友は、私の話を聞いて怒り心頭だった。
一般的な考えからしたら、そうだよね。
でも、結弦だもん。
私のものさしで測れる人じゃない。
結弦は、誰かに対して用済みのレッテルを貼るような人ではないけど、無駄なことに時間を使えるほど暇でもなくて。
だったら、私が別れを切り出すべきだよね。
「あんた、本当に執着心がないというか、さっぱりしているよね」
そうなのかな……。
執着したって、相手の気持ちは変えようがないでしょ。
「まだ好きなら、Aから別れようなんて言わなきゃいいじゃないの」
うん、だけどね。
結弦は、元々、恋愛に対する熱量が低い。
エネルギーの大半をスケートに注いでいるせいで、恋愛は後回し。
となると、あえて自分から私を切り離そうとしない可能性があった。下手をすると、不要になったことに気づかないというのもあり得る。
おまけに物を大事にする性質だから、私のことも布に包んで大切に引き出しに仕舞っておくかもしれない。
そして、引き出しに入れっぱなしにされたまま、時間だけが過ぎていく。
……困る。それはとても困る。
今のところ結婚願望はないけど、私も28歳。
引き出しの中で、朽ちていくのはイヤだ。
だから、結弦と別れるのは、私のためでもある。
ねぇ、そうとでも整理をつけないと、心穏やかではいられない程度には私も執着してるんだよ。
地元でのアイスショーを無事に終えて、結弦がホッと一息ついているだろう頃を狙って、会いたいと伝えた。
私の部屋の窓から、春になれば立派な桜が見える。
だから、会いに来て。お花見しよう?
「Aから会いたいなんて、めずらしいね」
電話越しの結弦は驚いていたけど、拒否はされなかった。
実は、結弦と私は喧嘩したことがなかった。
喧嘩どころか、言い争いもない。
ぺらぺらの薄い付き合いだったのかな……。今さら、思う。
4年が長いのか、短いのか、私にはわからない。
実際に結弦に会ったのは数えるぐらいだったし、お互いの感情をぶつけ合う時間も機会もなかった。
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エミル(プロフ) - くっきーさん» 短編、楽しみにしてもらえて嬉しいです!GIFT、想像をはるかに超えたショーでした。ハマりすぎて更新が滞っていますが、しばしお待ちくださいね。 (2023年3月2日 21時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
くっきー(プロフ) - やっぱりエミルさんの短編すごく素敵です!泣GIFT大成功でしたね!!これからの展開楽しみです、、 (2023年3月2日 1時) (レス) id: 95130b7885 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 璃子さん» 似通った話になりがちなので、新鮮と言ってもらえて嬉しいです(*´ω`*)ファン目線だと羽生さんのそばにいられるだけで幸せ。でも、実際に彼女になる方は大変だし我慢することも多いんだろうなって想像します。本当に幸せになって欲しいと私も思います。 (2022年4月10日 21時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
璃子(プロフ) - なんだか新鮮なお話でした。楽しく読ませて頂きました。実際お付き合いするとなったら…やはり今回の羽生さんのようにお相手を気遣って「俺といて楽しい?」とか気にしそうですよね。何にせよ幸せになって頂きたい方です。 (2022年4月10日 9時) (レス) @page23 id: a68a41f56a (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 鹿さん» 鹿さん、ほっこりしていただき、ありがとうございます(*^-^*)長編がアレなので、素直な二人にしました。幸せな羽生さん、増やしたい!会見は、羽生さんらしい世界観でした。 (2022年2月14日 21時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:エミル | 作成日時:2022年2月12日 22時