手紙−３ ページ40
＜Yuzuru Side＞
「あんまり思い詰めないほうがいいわよ。時間が薬だから。元気出して」
よほど俺が神妙な顔をしていたのか、姉が励ましてくる。
「大丈夫だよ。俺のことよりさ、自分はどうなの？」
「私？ あー、うん」
憂鬱な空気を払うように言うと、姉が急に視線を泳がせ始めた。
「え、なに？ なんか、あんの？」
「まあね、失恋したばっかのあんたに言うのも悪いんだけど」
失恋、失恋って、何度も言うな。
「実はね、結婚が決まったのよ」
「―――え、マジで！？」
「うん」
「そっか、おめでとう。つか、いつの間に！？」
「三年前からお付き合いしている人なの」
「そんなに前から？ 俺、全然気がつかなった」
トロントにいたときならともかく、ここ数年は同じ家に住んでいたのに、姉の恋人なんて気配すら感じなかった。
いや、違うな。
姉は、俺が感じなくて済むようにしていたんだ。
家族はいつだって、俺がスケートだけに専念できる環境をつくってくれていたから。
姉の年齢を考えたら、もっと早く結婚していてもおかしくない。
俺が引退したこのタイミングでの結婚は、現役の間はスケート以外のことに気を取られないよう、姉が待っていたと考えるのが自然だ。
「……姉ちゃん、今までありがとう」
俺が長い間現役でいることができて、夢を叶えられたのは、家族のおかげ。
それを当たり前のように思っていた自分は未熟だ。
「えー、なに、急に？ 家を出るのはまだ先よ」
「なんとなく……？」
「変な、ゆづ」
クスクスと笑う姉は、それでも嬉しそうだ。
一般家庭のうちでスケートを続けることができたのは、一人だけ。姉は俺のためにスケートをやめたけど、そのことを口にしたことは一度だってない。母親が自分のそばにいないことも、羽生結弦の姉という窮屈な立場にも、文句ひとつ言わない姉だ。
喧嘩することがあっても、弟としてどれだけ甘やかされて、可愛がられているかを知っている。
「本当に、おめでとう」
これまで我慢させたぶん、たくさん幸せになって欲しい。
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にき(プロフ) - ヒロイン思わせぶりすぎる笑熱愛報道出ても好きな相手のこと信じてやれって！笑 (2022年12月20日 2時) (
レス) @page37 id: ab0684a449 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - ほびまほぷさん» ほびまほぷさん、コメントありがとうございます。ここまですれ違うかなーと思いながら書いていました(^_^;)更新楽しみにしてくださるとのこと、今後も頑張ります！ (2022年2月10日 9時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
ほびまほぷ(プロフ) - 2人がすれ違いすぎてめちゃくちゃ泣けました、、更新楽しみにしてます！ (2022年2月10日 0時) (レス) @page45 id: ab6c13b289 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 凛音さん» 凛音さん、コメントありがとうございます。もちろん、最後はハッピーエンド……のつもりです！ (2022年2月6日 19時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
凛音(プロフ) - 2人が結ばれますように…！！！ (2022年2月6日 4時) (レス) @page44 id: f2426a3f71 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エミル | 作成日時：2022年1月14日 14時
