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冷たい手−4 ページ15

<Yuzuru Side>

「それであいつと付き合うの? それとも、俺とあいつで二股でもかけるつもり?」

Aを侮辱する言葉が自分からすんなり出てきたことに驚く。

家族のように素をさらけ出せるというのは―――裏を返せば、遠慮や気遣いがなくなること。
相手を傷つける行為にすら、ブレーキが効かなくなる。


「―――違うよ! 蒼には友達でいたいって前にちゃんと断った」

「断った? じゃ、どうしてまた会う必要があるの?」

「……それは……」

自分の手元を見つめているAは懸命に言葉を探しているようで、俺は彼女が口を開くのを待った。


「蒼からは夏頃に告白されて、そのときに断った。だけど……その……」

「引き下がらなかった?」

「……だから、もう一度話をしようと思って、昨日会っていたの。蒼にそんな話をしておいて結弦くんと会うのは気が引けるというか、申し訳なく感じて、結弦くんの誘いは断った。ごめん」

それは、Aなりの振った相手への気遣いと優しさなんだろう。


「だったら、昨日、きちんと話をつけたんだよね?」

「…………………」

「A?」

おい、なんでそこで黙るんだよ?


「……言えなかった」

「はあ? おまえ、なに考えてんの?」

「だって! ずっと友達だったんだよ。そんな簡単に割り切れないよ」

「いや、割り切れよ。だいたいさ、自分に好意を持っている奴と二人きりで会う時点でおかしいと思え。節操なさすぎだろ」

本心で節操ない子だと思っていたわけじゃない。ただ、好きな子を自分に従わせたいという邪な気持ちから出た言葉。


「待って。どうして、結弦くんにそこまで言われなきゃいけないの?」

「え?」

すると、それまでしおらしく項垂れていたAが俺を見上げて、

「恋人でもないのに、責められる覚えない」

完璧な正論を突きつけてきた。


「あー、そうだね。結局、Aもそいつに気があるんじゃないの?」

正論だからこそ、カチンときた。

「さっきから違うって言ってるじゃない」

「どうだか」


「私は……っ。……私が好きなのは―――」


まっすぐそらさずに見つめてくるAの澄んだ黒い瞳に―――不覚にも、この状況で胸がドクンと跳ねた。

Aは先を続けずに口を噤んだけど、言わんとしたことがなにかはわかる。


だから、俺は優越感に浸った。油断したとも、図に乗ったとも言う。


 
 
 

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設定タグ:羽生結弦 , フィギュアスケート   
作品ジャンル:恋愛
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にき(プロフ) - ヒロイン思わせぶりすぎる笑熱愛報道出ても好きな相手のこと信じてやれって!笑 (2022年12月20日 2時) (レス) @page37 id: ab0684a449 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - ほびまほぷさん» ほびまほぷさん、コメントありがとうございます。ここまですれ違うかなーと思いながら書いていました(^_^;)更新楽しみにしてくださるとのこと、今後も頑張ります! (2022年2月10日 9時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
ほびまほぷ(プロフ) - 2人がすれ違いすぎてめちゃくちゃ泣けました、、更新楽しみにしてます! (2022年2月10日 0時) (レス) @page45 id: ab6c13b289 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 凛音さん» 凛音さん、コメントありがとうございます。もちろん、最後はハッピーエンド……のつもりです! (2022年2月6日 19時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
凛音(プロフ) - 2人が結ばれますように…!!! (2022年2月6日 4時) (レス) @page44 id: f2426a3f71 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:エミル | 作成日時:2022年1月14日 14時

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