恋人役−７ ページ7
＜Yuzuru Side＞
それは、偶然耳にしてしまった話が発端だった。
夜中に練習をし、帰宅後はたいてい昼前まで寝ているのだけど、その日は寝苦しくて朝方に目が覚めた。水でも飲もうとぼんやりする頭で部屋から出て、キッチンに続くドアを開けようとしたとき、母親と姉の会話が聞こえてきた。
「え、じゃあ、結弦が原因で結婚の話が進んでいないの？」
「……うん、そうなの」
母親の問いに、姉が答えている。
「でも、まさか結弦のことをそんなふうに思われていたなんて」
「否定はしておいたけど、実際ゆづはずっと彼女いないし、いまいち信じてもらえてないと思う。スケーターにはカミングアウトしている人も多いし。特に彼のおじい様が嫌悪感を持っているらしいのよね」
「世代的には理解に苦しむところでしょうね」
…………これは……。
もしかして、俺、姉ちゃんの彼氏の親族からそっち系って疑われてる？
しかも、そのことが原因で姉ちゃんの結婚が危うくなってんのか！？
「ねぇ、あの子、本当に彼女いないのかな？」
「家とリンクしか往復していないのに、いないでしょう」
「トロントにいたときも？ たとえば、彼女はいなくても、年頃の男子が見るビデオや本が部屋に転がっていたとか」
「……ないわね」
朝っぱらから、なんつー話してんだ……。
っていうかさ、いまどきは動画だし。ビデオで見る奴なんていないだろ。ましてや、本なんて俺がどんな顔でレジに持って行けるっていうんだよ……。
「彼の家族から疑われているのは別にして、私も心配なのよね。ゆづ、引退しても家にこもって、一生独身なんじゃないかって」
「……そうね」
「私も彼も年齢を考えると、結婚したら早い段階で子どもが欲しいなって話をしているの。彼のご両親は遠方だし、私も初めての子育ては不安だからここに里帰りさせてもらいたいけど、ゆづが現役の間は赤ちゃんを連れて帰るのは無理よね」
ぼそぼそと聞こえてくる二人の話に、俺は水を飲むのを諦めて、部屋にUターンする。
……まいったな。
俺の存在が姉ちゃんの結婚の邪魔をしていただなんて。
いっそ、一人暮らしするか？
今は、冷凍食品やコンビニでなんでも手に入るし、できなくはない。
でもなー、わがままだけど、現役の間はスケートだけに専念したいってのが本音で。かといって、彼女を作る気は毛頭ない。
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エミル(プロフ) - MERさん» MERさん、ご指摘ありがとうございます。気を付けます (2021年7月14日 23時) (
レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
MER - 所々美百合さんになってますよ (2021年7月14日 22時) (レス) id: 39acd1ff39 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 鹿さん» 鹿さん、初めまして。コメントありがとうございます。わくわくするって感想、とても嬉しいです♪羽生さん、大人っぽいですかね？今後も楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2021年7月12日 20時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - はじめまして！斬新な設定にわくわくしています＾＾ここの羽生さんはとても大人っぽいですね。大人な羽生さん大好きなので、嬉しいです！更新頑張ってください！ (2021年7月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エミル | 作成日時：2021年7月10日 18時
