仮面−11 ページ45
<Yuzuru Side>
「詮索するわけじゃないけど、一応、誰なのか知っておいた方がいいかなと思ってさ。姉ちゃんにも説明しとかないと、変に勘繰られたら困るだろ」
「……うん、ごめんね。お姉さんにまで心配かけて」
Aは、申し訳なさげに眉毛を下げる。
「一緒に歩いていたのは、この前体験に行ったフットサルサークルの人。金曜日に歓迎会してくれるって急に誘われて、飲みに行ったの」
「は? 俺がショーで頑張っているときに飲みに行ってたのかよ?」
「――――え?」
「……あ……」
目を丸くしたAに、俺も口元を手で覆う。
―――失言だ。
とんでもない失言に、自分を殴り飛ばしたくなる。
だけど、一度口から発した言葉は取り戻せない。
一睡もできなかった……。
体はクタクタに疲れているのに、頭が冴えて寝つけなかった。
あの失言の後、Aは蒼褪めた顔で体を縮こませて、「勝手なことをして、ごめんなさい」と消えそうな声で謝ると、自室にこもってしまった。
マズイよな……。
完璧、上から目線の発言。たとえ、俺が彼氏だったとしても言っちゃいけないやつだ。
自分たちは対等じゃないと、Aに思わせてしまった。
サイテーだ、俺。
どんなに上辺だけ取り繕ったって、あれが本音だと思われたに違いなくて……。少しずつ築き上げてきた信頼を崩すには十分だった。
謝るしかない。誠心誠意、謝ろう。
「……結弦くん、起きてたの?」
朝、六時。ドア口に立ったAが、いつもだと起きていない時間にリビングにいる俺を少し驚いた表情で見た。
「昨日のこと、謝りたい」
俺がソファから立ち上がると、Aは困った顔をした。
「結弦くんが謝る必要はないよ。結弦くんに養われている立場なのに遊びに行った私が間違ってた」
「ま、待って。違うから! 俺の話を聞いて」
俺はAの腕をそっと掴むと、ソファに座らせた。
「言い訳に聞こえるだろうけど、俺がスケートしている間は家から出るなとか、遊ぶなとか、言うつもりも考えてもない。昨日のは……なんていうか、その……俺以外の人と遊びに行ったんだなって思ったら、疎外感があったっていうか、寂しかったっていうか……」
話しながら、だんだん声が小さくなっていく。ガキみたいな、いや、ガキでしかない言い分に身の置き所がない。
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エミル(プロフ) - MERさん» MERさん、ご指摘ありがとうございます。気を付けます (2021年7月14日 23時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
MER - 所々美百合さんになってますよ (2021年7月14日 22時) (レス) id: 39acd1ff39 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 鹿さん» 鹿さん、初めまして。コメントありがとうございます。わくわくするって感想、とても嬉しいです♪羽生さん、大人っぽいですかね?今後も楽しんでいただけるよう頑張ります! (2021年7月12日 20時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - はじめまして!斬新な設定にわくわくしています^^ここの羽生さんはとても大人っぽいですね。大人な羽生さん大好きなので、嬉しいです!更新頑張ってください! (2021年7月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:エミル | 作成日時:2021年7月10日 18時