契約−２ ページ21
「ゆづが急に彼女を連れてくるって言うからびっくりしちゃったけど、二人はどこで知り合ったの？」
「佳菜の紹介だよ。彼女は、佳菜の幼馴染」
お姉さんの質問に結弦くんが答える。
結弦くんと事前に打ち合わせした、出会いから同棲までのストーリー。
佳菜子の紹介で一か月前に知り合い、お互いに一目ぼれ。その日に付き合いがスタートし、結弦くんの希望で同棲を始めるに至った……。
「さすがに一ヶ月で同棲は反対されるんじゃない？」
しかも会ったのは、二回しかない。
「嘘は少ない方がいい。凝ったストーリーにすると、ボロが出る」
「……結弦くん、浮気しても彼女にバレないタイプでしょ」
言っていることは理にかなっているけど、平然とした顔をしている結弦くんを見ていると、この人の嘘を見破るのは至難の業なんじゃないかと思った。
「浮気なんかするかよ」
思いきり顔をしかめた結弦くんは不機嫌そうに唇を結ぶ。
相当モテるだろうし、本人にそのつもりがなくても誘惑は多いはず。浮気しないなんて、本当なのかなあ……。ま、私には関係ないけど。
「いくらなんでもお付き合いを始めて一ヶ月で同棲というのは早いんじゃないかしら？」
案の定、お母さんが結弦くんと私を見比べなら、難しい表情をする。
「確かに出会ってからの期間は短いし、会った回数も少ないけど、お互いを必要とするのに時間は関係ないと思う。同棲は、二人でよく話し合ったうえで決めたこと。シーズンが始まって長期間会えないと、スケートに支障をきたす。それじゃ、困るから」
「……、……そんなにAさんを好きなの……」
一気に捲し立てる結弦くんに気圧されたように、お姉さんが呟く。
「うん。すごく好き。だから、一緒にいたいし、すれ違いはできる限りなくしたい」
隣りで会話を聞きながら、全身が熱くなってくる。
もちろん、これは嘘だ。わかっていても、冷静でいられない。
しかも、結弦くんは、ごく自然にさらっと言ってのけている。
さすがは演技をする競技の王者。
「Aさんも同じ気持ちなのかな？」
「え？」
それまで黙っていたお父さんが私のほうに話を向ける。
ゆったりとした静かな口調だけど、その目は私をしっかりと見据えていた。
「……私は」
一旦言葉を切って、息をつく。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 172人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
エミル(プロフ) - MERさん» MERさん、ご指摘ありがとうございます。気を付けます (2021年7月14日 23時) (
レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
MER - 所々美百合さんになってますよ (2021年7月14日 22時) (レス) id: 39acd1ff39 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 鹿さん» 鹿さん、初めまして。コメントありがとうございます。わくわくするって感想、とても嬉しいです♪羽生さん、大人っぽいですかね？今後も楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2021年7月12日 20時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - はじめまして！斬新な設定にわくわくしています＾＾ここの羽生さんはとても大人っぽいですね。大人な羽生さん大好きなので、嬉しいです！更新頑張ってください！ (2021年7月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：エミル | 作成日時：2021年7月10日 18時
