仮面−５ ページ39
陽射しがきらめいて零れる。私は眩しさに目を細めながら、洗い立てのシャツをパンッと叩いた。爽やかな風にのせて石鹸の香りが溶けていく。
マンションの裏は川に面していて、流れる水面は真夏の光を受けてキラキラと輝いている。対岸の先には、森が広がり、風に運ばれてくる新緑の匂いが広めのベランダを包んでいた。
「……うーんっ、気持ちいい」
両手を組んで伸びをすると、清々しい朝の空気に満たされる。
アイスショーに出演するために結弦くんが横浜へ発ってから、二日目。
一緒に暮らしていれば、相手が誰であろうと気を遣う。たとえば、食事をするタイミング、お風呂に入る順番、エアコンの温度、生活音……小さな積み重ねだけど、ストレスにはなる。もちろん、それは結弦くんも同じだと思う。
だから、結弦くんが一週間位不在にするって聞いたときは、ほんの少し嬉しかった。
思いきりダラダラして過ごそう。食事も三食きっちりじゃなくて、手抜きありで。夜中の送迎もしなくていいから、晩酌もできる。
けれど……。
実際一人になると、やたらに部屋が広く感じた。結弦くんの声がない食事の時間は味気ない。長い間一人暮らしをして慣れていたはずだったのに……。
彼がいないだけで、いつもの日常が色彩を失ったみたいだ。
結弦くんは、おしゃべり好きでユーモアがあるだけじゃなく、私では思いもつかない物事の見方や考え方だったり、新しい世界を教えてくれる。
人として尊敬できるし、なによりも優しげな瞳に見つめられるだけで、幸せな気分に充たされる。
結弦くんと過ごす穏やかで楽しい時間が自分にとってかけがえのないものになっていることを認めないわけにいかなかった。
……あってはならない感情。本当に、どうかしている。
『ちょうどよかった、私も電話しようと思ってたところだったの。ゆづ、今アイスショーでいないでしょ』
電話の向こうで、佳菜子の明るい声が響く。
『同棲生活、どう？ 慣れた？』
『うん』
『ゆづ、わがまま言ってない？』
『……わがままなんて言われたことないよ』
私にして欲しいことや自分がやりたいことを結弦くんはストレートに伝えてくれるけど、私の意志を確認せずに押し通すことはないし、むしろすごく気遣ってくれている。
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エミル(プロフ) - MERさん» MERさん、ご指摘ありがとうございます。気を付けます (2021年7月14日 23時) (
レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
MER - 所々美百合さんになってますよ (2021年7月14日 22時) (レス) id: 39acd1ff39 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 鹿さん» 鹿さん、初めまして。コメントありがとうございます。わくわくするって感想、とても嬉しいです♪羽生さん、大人っぽいですかね？今後も楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2021年7月12日 20時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - はじめまして！斬新な設定にわくわくしています＾＾ここの羽生さんはとても大人っぽいですね。大人な羽生さん大好きなので、嬉しいです！更新頑張ってください！ (2021年7月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エミル | 作成日時：2021年7月10日 18時
