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知らない包帯 ページ3

彼の名は、中原中也と云うらしく、仕事の内容はまだ分かりません。
でも何かと忙しいらしく、家に帰って来れない日は

「ごめんな」

と申し訳なさそうに、二日分のごはんを置いて、頭を撫でて行きました。
私はそんな優しい彼が大好きでした。
がちゃりと扉の音が聞こえます。
中也が帰って来たと思って、開け放たれた扉から玄関まで歩いて行きました。
でも、違ったんです。
扉から入って来たのは、中也ではありませんでした。

「ピッキング成功…って、あれ。中也、猫なんて飼ってたっけ?」

包帯をぐるぐる巻きにした、別の男の人でした。
私は警戒して、毛を逆立てて距離を取ります。

「…私、猫にも嫌われちゃうのかナ?」

そう言って、頭をぽんぽんと二回撫でて廊下を歩いて行きました。
…中也の名前も知っていたけど、知り合いなのでしょうか…。
少し警戒心は解けましたが、完全にという訳ではありません。
後ろを少し離れてついて行くと、台所で珈琲というものを作りはじめました。

…特別変な事もしないし、大丈夫ですかね。
そう判断して、座った彼の膝にぽすりと座りました。

「おっと、中也と違って素直な子だね」

よしよしと言って、珈琲を飲みながら雑誌を読む彼。
少しして、また扉の音が聞こえました。
中也だ、と思って少し早足で玄関へ向かいます。

中也でした。
帽子と外套を腕にかけて、私を抱き上げて「ただいま」と笑いました。
ですが、一変して怒り顔でどすんどすんと足音をわざとならしながら部屋の扉を開けたんです。
その瞬間、耳を劈くような声で怒鳴りました。

「太宰ィ!!手前、また勝手に人の家に上がり込みやがって!!」

すると、包帯の人は耳を塞いで、てんで悪びれる様子も無く玄関の方を指差しました。

「だって簡単に開くんだもん。それより、猫飼ってたんだね。」
「簡単に開くだァ!?冗談じゃ無ェ!!どうせピッキングでもしたんだろ!!」
「当たり。でも私の話聞いてた?猫飼ってたんだね。」
「…あぁ、こいつは拾ったんだ。可愛い奴だろ?」

な?と言って私の方を見つめたので、私はそれが嬉しくて、にゃあと一回鳴きました。

おかえりなさい→←此の人なら



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なぴあ - すごく面白かったです〜!!! 猫も中也も好きなので幸せでした(泣) これからも頑張って下さい!!! (2022年3月11日 16時) (レス) @page8 id: bc58708f8e (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。 - 既存の作品をもとにした二次創作なのでオリジナルフラグを外してください。多分低評価もそれが原因かもしれません。 (2018年4月9日 20時) (レス) id: 2fca820d76 (このIDを非表示/違反報告)
ぶどうしゅ(プロフ) - はじめまして!!この話をよんで思わず涙が零れそうになりました。これからも頑張って下さい (2017年12月27日 16時) (携帯から) (レス) id: 7cee4984be (このIDを非表示/違反報告)
りんご - (涙) (2017年3月24日 14時) (レス) id: 0e268ef785 (このIDを非表示/違反報告)
らいむ@エミリア(プロフ) - おさるさん» ありがとうございます!感動して頂けるものが書けたかどうか不安だったのですごく嬉しいです・・・!!これからも頑張ります!! (2017年2月15日 0時) (レス) id: 484db0ba6e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:らいむ@エミリア | 作成日時:2016年12月31日 23時

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