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込められた想い ページ5

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まだ、まだだって思う。まだ、そうと決まった訳じゃない。


だって、炭治郎とは、昨日一緒に町まで下りて。私だけが町に残ったけど、でも、またねって、迎えに来るからって言われて。


だから、でも、なんで、本人が居ないんだろう。どうして炭治郎の髪を持ってるのがこの人なんだろう。どうして母さんとか、禰豆子は、……そうだ、他の皆は。


「……あ、の! 他の、皆はどうしてますか? 炭治郎の、この髪色の弟の他にも、家族がいた筈なんです。母さんたちは……、皆、は」

「殺された」


──心臓が、軋む。



「人を主食とする“鬼”という生き物がいる。お前の家族を殺したのも鬼だ。偶々通りかかった俺は、炭治郎から言付けを頼まれた」


──やめて。


「町に残した姉にと。自分と同じ耳飾りをしている筈だと言われて、俺はお前を探していた」


──やめて。


(もう、これ以上は……!)


そう、声を上げる直前。



──カラン、と。耳飾りが揺れる。



炭治郎に、ちゃんと聞いてくれ、と。言われた気がした。


「……一人残すことになる、お前のことを案じていた。最後まで」


彼の言葉が、すんなりと耳に入る。炭治郎なら、そう言うだろうなと思った。いつだって家族のことを想ってくれていた、優しい子だったから。


炭治郎だけじゃない。他の皆だってそうだった。いつも、互いのことを思い遣っていた。いつも、互いに互いを優先していて……


『お姉ちゃん!』


──皆、大好きだった。



「自分たちはそばに居られないけど。それでも、繋がっているから。どうか、一人だと思わないでほしいと」


その時初めて、淡々としていた彼の声に、優しさが混じる。

思い浮かべているのだろうか。その言葉を託す時の、炭治郎の最期(・・)を。


「それと──約束を、忘れないでいてほしい、とも」


カラン、カランと。耳飾りが揺れる。私を慰めるように。伝えてくれた彼に、お礼を言うように。


「っ、……ふ、……」



ひどいことを言う、炭治郎は。


“家族の居ない世界で、それでも生きて、他に愛する人を見つけて、幸せになってほしい”


そういうことだ。“約束”を忘れないでというのは。叶えてほしいということは。



出来る訳ない、と思う。
失う苦しみを理解ってて、愛なんて、幸せなんて、探す気にもなれない。


それでも。




(お姉ちゃんなら、愛する弟のお願いは全て叶えてみせるものだから)




とめどなく溢れる涙を拭って、私は笑った。

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ドジ猫(プロフ) - 絵宙(えそら)さん» 一応、炭治郎の髪ってことで炭治郎本人は数に入れてないです! わかりにくくてすみません!汗 (2020年3月30日 6時) (レス) id: a192f6ddb7 (このIDを非表示/違反報告)
絵宙(えそら) - ページ5の「込められた想い」では、弟の数は、茂、六太、竹雄、炭治郎(漢字が違うかもしれません)で、四人だと思います。細かくてすいません。これからも頑張ってください!楽しく読ませていただいてます! (2020年3月30日 3時) (レス) id: 63faa5bcfc (このIDを非表示/違反報告)
由亜(プロフ) - とっても面白いですね!一気に読んじゃいました。寝転びながら読んでたんで、シーツの一部分になみだのしみが・・・(泣きました)これからlet's続編で御座います!面白い小説を有難う御座いました (2020年2月24日 4時) (レス) id: d2128f7714 (このIDを非表示/違反報告)
タートル(プロフ) - 失礼致します!面白くて一気に読んでしまいました!私も鬼滅のお話を書いているので良かったらお越しください。 (2020年2月19日 20時) (レス) id: 77bb05bd52 (このIDを非表示/違反報告)
ドジ猫(プロフ) - なるは。さん» ありがとうございます!嬉しすぎて顔がにやける……!これからもよろしくお願いします!! (2020年2月16日 22時) (レス) id: a192f6ddb7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ドジ猫 | 作成日時:2019年12月19日 0時

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