溢れる感情 ページ20
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しのぶさんが、周りの人たちが、揃って驚いたように肩を跳ねさせる。
何事かと振り向く彼らの視線を気にする余裕もなく、ただ私は叫んでいた。
「嫌です、絶対に嫌です! 家でじっと待ってるなんて出来ません、知らないフリなんてもっと出来ません!!」
静かにと、落ち着けと、自分でも思う。それでも口から出る叫びを止められなかった。今止めたら、今吐き出せなかったら、心の中の感情の糸がどうしようもない程絡まって、二度と解けなくなりそうだったから。
二度と、向き合えなくなりそうだったから。
「……確かに、復讐がしたかったです。家族が殺されて、私だけが生き残って、“鬼を殺す”手伝いが、したかったです」
こぼれ落ちるのは、全て“本心”だ。私の、本当の心。真の言葉。
「でも、でも。私、弟が出来たんです。母上と、父上と、呼べる人が出来たんです。ようやく掴めた幸せなんです。何よりも守りたい、家族なんです」
カラン、と耳飾りが揺れる。そうだ、そうだった。失ったけど、また出来たんだ。守るべきものが、大切な宝物が、また。
「だから、私は貴女たちの手伝いがしたいです! 力がなくても、出来ることがなくても、それでも私は──」
最後の一言は、あまりに呆気なく。
「
私の口からこぼれ出た。
***
乱れた息が白く染まって、私ははっと我に返る。
「あ、あの、今のお芝居の話で、だから、その……、お騒がせしてすみませんでした!!」
往来で鬼の話題を出してしまうなんて不注意にも程がある。しかも全力で叫ぶなんて!
必死で誤魔化しながら前を歩いていたお二人の手を引いて、私は家に向かう。取り敢えず、落ち着ける場所が欲しかった。母上には迷惑をかけてしまうけど……
「……やっぱり思った通りだったわ。ねえしのぶ?」
「……そうね、姉さん」
「えっ、と……?」
その会話の意味が分からずに、疑問符が頭に浮かぶ。どういうことだろうか。
「ふふ。実はね、私たち、貴女の舞いを観ていたの。この町に到着した後、すぐにね」
「屋根の上から、綺麗な舞いだって見惚れていたのよ。貴女はすぐに倒れてたけど」
やっぱり、と思った。仰向けで倒れ込んだ私の視界によぎったのは──
「それはそれとして。協力、頼んだわよ?」
「よろしくね、Aちゃん」
「っ、はい!」
羽ばたく蝶を二匹連れて、私は家まで走った。
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ドジ猫(プロフ) - 絵宙(えそら)さん» 一応、炭治郎の髪ってことで炭治郎本人は数に入れてないです! わかりにくくてすみません!汗 (2020年3月30日 6時) (レス) id: a192f6ddb7 (このIDを非表示/違反報告)
絵宙(えそら) - ページ5の「込められた想い」では、弟の数は、茂、六太、竹雄、炭治郎(漢字が違うかもしれません)で、四人だと思います。細かくてすいません。これからも頑張ってください!楽しく読ませていただいてます! (2020年3月30日 3時) (レス) id: 63faa5bcfc (このIDを非表示/違反報告)
由亜(プロフ) - とっても面白いですね!一気に読んじゃいました。寝転びながら読んでたんで、シーツの一部分になみだのしみが・・・(泣きました)これからlet's続編で御座います!面白い小説を有難う御座いました (2020年2月24日 4時) (レス) id: d2128f7714 (このIDを非表示/違反報告)
タートル(プロフ) - 失礼致します!面白くて一気に読んでしまいました!私も鬼滅のお話を書いているので良かったらお越しください。 (2020年2月19日 20時) (レス) id: 77bb05bd52 (このIDを非表示/違反報告)
ドジ猫(プロフ) - なるは。さん» ありがとうございます!嬉しすぎて顔がにやける……!これからもよろしくお願いします!! (2020年2月16日 22時) (レス) id: a192f6ddb7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ドジ猫 | 作成日時:2019年12月19日 0時