勘違い系彼女【松野千冬】 (ページ10)

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来てたんだページ10

どこかで会った気がするんだけどな…

ダメだ、全然思い出せないや。

真っ黒の特攻服、だったかな？
その筋には全く興味がないから
わたしには良さが理解できないけど
凄く派手という訳でもなく
上品、とはお世辞にも言えない
独特な服を来ている子だった。

周りにそんなの着てる子なんて
千冬くらいしか思い付かないし
たぶんわたしの勘違いだろう。
少なくとも知り合いではないはずだ。

気にする事はないな。

前を歩く友達に遅れを取らないよう
カタカタと下駄を鳴らし
隣に並ぶように小走りで追いかける。

あんな垢抜けない感じの子なのに
何で不良なんかやってるんだろう…？
もしかしてパシリにされてたりして。

…

……

垢抜けない感じの子？
どこかで…？

そうだ…

あの時だ！

パッと頭の中に浮かんでくる
大雨の日にぶつかった溝中の男の子。
あの髪型はきっと間違いない。

くるっと後ろを振り返ったその時

＿＿千冬！ちょっと待てって！＿＿

と、かすかに響いたその声は
わたしの大好きな人の名前を叫ぶ。

千冬＿＿？

そっか…来てたんだ…。
会えるかな？ってちょっとは期待してたけど
いざ近くにいるのが分かっても
誰と一緒なんだろうかと気になって
探しに行こうにも1歩足が出ない。

あの男の子が一緒にいるって事は
もしたけみちゃんと一緒だったとしても
2人きりじゃないって事が分かって
少しだけホッとする。

Aー！早く行くよー！
花火始まっちゃう！！！

という友達の声に急かされて
またカランカランと音を立てながら
急ぎ足で隣に並ぶように歩く。

焼きそば、お好み焼き、唐揚げ、たこ焼き
かき氷、わたあめ、チョコバナナ、りんご飴。

どっさりと買い込まれた食べ物を手に
予め場所取りをしてくれてた友達と合流する。

こんなに買って誰が食うんだよ！
なんて言いながらも
皆あっちもこっちも手をつける。
その様子がおかしくて、大笑いの中花火が始まる。

来年は誘わないでね

来年こそ彼氏と一緒に来よう…

1人だったらどーする？

なんて言い合いながら眺める花火は
とても眩しくて、とっても大きくて
打ち上がる毎に、わーー！と拍手をする。

夢中になって見上げる花火を前に

「絶対来年は彼氏と来ようね！」

と、隣にいるはずの友達に声をかけると

『俺も来年は女連れて歩きてぇなー』

と、聞こえるはずのない声が聞こえた。