勘違い系彼女【松野千冬】 (ページ4)

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レモン味ページ4

翌日目覚めると
なんとなく喉に違和感がある。
何かが詰まっているような
イガイガとするような
とにかく痛い。

昨日ははしゃぎすぎたのかもしれない。
結局6時間程歌いきり
もう暫くいいや、というくらい
散々遊んでしまった。
相当喉に負担がかかってしまったのだと思う。

「あーーーー」

と声を出してみると
嗄れて他人のような声になっていた。

あー…やっちゃった…。
声の掠れ程度で学校を休む訳にはいかない。
しょうがない、行くか。

ママにのど飴をいくつか貰って
ポケットの中に忍ばせておく。
行ってきまぁす…という声も不自然だ。

「おはよー」
と教室に入ると、案の定クラスの子が
声どうした？ヤバいじゃん。
って心配してくれる。

『すげー声だな、お前』
なんて笑いながら、千冬はポケットから
『これやるよ。少しはマシになるんじゃね？』
と、レモン味ののど飴をくれた。

『ありがとー…』
って貰った飴を口の中に入れながら
昨日たけみちゃん見かけたんだよ…
って言いたかったけど
やっぱりわたしには言えないや。

そもそも一晩寝てみると
本当にたけみちゃんだったかどうか怪しい気もするし。

『隣んちのババアみてぇだな…』
と、追い討ちをかけるように呟く千冬。

複雑な気分だ。
とっても。
知らなくてもいい事もある。
余計なお世話かもしれないな。
でも、近況くらい聞いてみてもいいかもしれない。

「千冬さ、最近どう？相方のたけみ…」
といいかけたところで
携帯の着信音が鳴る。
この音はわたしじゃないから千冬かな？

そっと目を向けてみると
ん？俺か？って画面を確認する。
表情がパーッと明るくなった気がした。

『タケミっち？』
と、嬉しそうに電話に出た千冬は

うんうん、そっかー
ほんとバカだよなーお前はー
えー？俺そんな事言ったっけ？

なんてニヤけた顔で、うんうん、と頷いている。

『じゃあ今日帰り行くから』

と言うと、満足そうな顔で電話を切った。

今日…行くから…？
って今言った…？

頭を何かで思いっきり殴られたような
目の前が一瞬で真っ暗になったような
ものすごい衝撃だった。
朝からずっとイガイガとしていた
喉の痛みなんて忘れてしまう程に＿＿＿＿＿＿。

行かないで、なんて言えるはずがない。

わたしはしばらく黙り込んでしまった。