勘違い系彼女【松野千冬】 (ページ11)

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片想いって難しいページ11

＿＿＿？！

「千冬！？」

驚いて思わず大きな声が出てしまう。

『そんなデケェ声出さなくても聞こえてるっつーの』
と、表情を緩めた顔で笑う。

「何で…？千冬さっき友達と…」
と、途中まで喋りかけたところで

『タケミっち達と一緒にいたんだけどさぁ』
と、わたしの言葉を遮るように喋り出す。

はぐれちゃって、携帯に電話しても出ねーし
メール入れても全然返事が返ってこねーから
探してたんだけど見つかんねーんだよ

『つーかお前、見かけたんなら声かけろよ！』

なんて、じとっとした眼差しを向けてくる。

声なんてかけられるわけないじゃん…。
何が悲しくて好きな人が好きな人といる時に
話しかけなきゃいけないんだ…。

千冬は本当にいじわるだ。

「あ…ごめん…」
と謝ると

『いいじゃん、それ…』
と、さっきとは違う少し照れたような
はにかむような顔で浴衣を指を指す。

急にそんな事を言い出す千冬に
思わずドキッとしてしまう。
嬉しくて口元が緩んでしまいそうで

「これ？」
と、袖の端をヒラッと上げてみせると
目を逸らすように
ん、と袖を引っ張りながら
『これ』と言う。

「ありがと…」

やっと口から出た言葉は
タイミング良く上がった
花火の大きな音でかき消される。

この気温と人混みの中で体温が上がっているのか
たった今の千冬の行動で一気に上がったのか
どっちだかは分からないけど
痺れるように体と顔が火照り出す。

なんだ…
なんだこの展開は…

期待しちゃダメ！
と思うわたしと
期待してもいいんだろうか？
と思うわたしが
頭の中で脳をぐるぐると掻き回す。

「千冬さ、探さなくていいの？」

【たけみちゃん】と名前を出す勇気がなくて
相棒達待ってるんじゃない？
向こうも千冬の事探してるかもよ？
と、心配する素振りをしてみる。

これ以上一緒にいたら
雰囲気に流されてしまいそうで怖くて
思ってもいない言葉を吐き出してしまう。
本当はこのまま一緒にいたい。
最後までずっと2人で眺めていたい。

そう思ったけど
想像以上にドキドキと高鳴る心臓は
口に出してしまわないと治まりそうもなく
この苦しいような嬉しいような痛みは
一緒にいたら開放されることはないだろう。

息が詰まるような時間はここまで＿＿＿。

わたしは
「行っておいでよ！」
と、そっと千冬の背中を押した。