何度だって 【佐野万次郎】

何でここにいるの？ ページ8

電話を切った後
どんな服を着ていこうか？
せっかくのクリスマスだし
たまには少しオシャレしなくちゃ！
と思って
クローゼットからパパッと何着か引っ張り出し
どれにしようかな？なんて眺めながら
本来だったらイブの日に着るはずだったワンピースを手に取る。

せっかく買ったのに勿体ないし
これ着てこうかなって思って
そっとハンガーに掛けておいた。



当日





万次郎は今日
トーマンだかピーマンだかの集まりがあるから
夜は電話してきても出られないからね
という様な事を言っていた。
恐らくドラケンも一緒だろう。

だから
めかしこんでWデートをしているであろう
現場に遭遇される事はないと思う。
さすがに昨日の今日、友達が一緒とはいえ
男と歩いてる、なんてところを見られれば
どんな顔をされるか分からない。



時刻は18時。

「今夜は雪が降るでしょう、暖かい上着を着て…」

と、リビングで喋っているテレビの予報を聴いて
ホワイトクリスマスになるんだな…
なんて思いながら家を出た。


数日前は、消えてしまえと思ったイルミネーション。
あの日よりもずっと気持ちは楽になった。
けどやっぱり1人で歩くとどこか寂しい。


待ち合わせの場所につくと
もう友達は先についていて
こちらに向かって、こっちだよーと手を振る。
すでに2人はぴったりとくっついていて
別にわたし来なくても良かったじゃん
と思った時
2人のそばでもう1人立つ男の姿が目に映る。



…
なんで？

なんでこいつがここに。


もう1人の男と目が合う。

やっぱりそうだ。





「何してんの」
と声をかける。

あれ？A知り合いだった？
と不思議そうな顔で聞いてくる友達の声は
どこか遠くから聞こえる。


ううん、何でもないよ、行こっか
と2人を先に歩かせて
わたしはやっぱり来なきゃよかったと思った。



隣を歩く元彼は、あの日とは違う
大好きだった頃の少しはにかむような笑顔で
『元気だった？』
と問いかけてくる。


そりゃもう元気ですよ
あんたのお陰で毎日楽しかったよ
と嫌味ったらしく言えるはずもなく
まぁね、とだけ答えておいた。

おかしいぞ→←友達の頼みは断れない

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