何度だって 【佐野万次郎】

またフラれたよ ページ1

「他に好きな人ができた。ごめん。」





何を言ってるんだ、この人は。
ずっと一緒にいようねって約束したばっかりじゃん。

来月の誕生日はいっぱいお祝いするから
って言ってくれたじゃん。


それなのに【好きな人ができた】って
わけがわからない。



もう嫌だ…

恋愛なんて２度とするもんか。


もう嫌だ
本当にもう嫌だ



助けてよ……万次郎。









クリスマスも近づき、年末も控えていて
世間は大忙しのシーズンだ。

街を歩いても周りはカップルや子連れの夫婦で賑わい
イルミネーションはピカピカと嫌味のようにわたしを照らしてくる。



クリスマスは忙しくて会えなそうって言ってたのは
他の女だったか、と気づく。


どこを歩いてもガヤガヤと頭に響く喧騒は
昨日までのわたしを嘲笑うかのように思えて気分が悪い。



泣きそうだ。


ポケットから携帯を取り出すと
履歴の1番上の番号を押す。


プルルル…プルルル…プルルル…
3コール目で出る。


「もしもしそちら万次郎くんでしょうか。今からお邪魔します。」

と言って、返事も聞かずに電話を切る。


コンビニ寄ってプリンとたい焼きと
あったかいカフェオレでも買っていこう…



いくつかの角を曲がってしばらく歩くと
見慣れた家に着く。


おじゃましまーすと半分我が家のような感覚で
中に入ると、エマが部屋からひょっこり顔を出す。

マイキーならドラケンと部屋にいるよぉ
と声をかけてくれる。

「お邪魔するね」
と伝えて、いつもの万次郎の部屋に入る。



「万次郎」


と声をかけると

どうした？A、そんなに俺に会いたかった？
とソファで手招きする。

おー座れよ、つーかなんつー面してんだよ
と笑うドラケン。




さっきまでとは違う、いつもの穏やかな雰囲気で
わたしはちょっとだけほっとする。


万次郎の隣に座り
さっきあった出来事を2人に話す。



「またフラレたよ。わたし」


すると万次郎は
少し驚いたという顔をしてから
そっかー。お前よりいい女なんかいねぇのにな。
って頭をポンポンっと叩く。

ドラケンはまーた始まったか
という顔をして
『おいA、あんまりマイキー虐めてやんなよ』

って言いながら
めんどくせぇからエマんトコいるわ
って出ていく。


ふたりで並んで座っていると
堪えていた涙がぶわーっと出てきてどうしようもない。

もう２度と恋愛なんかするもんか
もー嫌だ！
男なんか一生いらない！
という言葉を、ひたすら万次郎にぶつけた。

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