Mirage 2 (ページ6)

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目を覚ますと、私はベッドの中にひとりだった。

「ゆうくん」

シーツに包まったまま、口に出して呼んでみる。

隣にいると思っていた裕太が、此処にいないという今この現実が、心細くただ単純に怖かった。

目を閉じると、今すぐにでも “あの日” に戻ってしまうような気がした。

『……離せ…っ』
『っゆうくん！』

『やめ……ろっ…！やめ、っ……』

衣月先輩がこの世界からいなくなった日、誰よりも早く病院に着いたのは裕太だった。

裕太のお母さんから連絡が来て、私もすぐに病院に向かった。携帯電話を握りしめる手が、震えてどうしようもなかった。

『………っ、』

白く光る蛍光灯の下で、廊下の壁に縋りつくようにしながら冷たい床に裕太は崩れ落ちていた。

肩に伸ばした手を突き放されてそれでも、私が裕太に縋りつくように、身体が出せる限りの力を振り絞って抱きしめた。

足が竦んで膝が震えていた。抱きしめている手にぎゅっと力を込めていないと私の震えが裕太にまで伝わってしまうと思った。

『ゆう…裕太…っ！』

何をともわからないまま確かめるように名前を呼ぶしかできなくて、廊下に蹲るわたしたちは、いま世界にたった二人きりなんじゃないかと思うくらいの淋しさ、悲しみと痛みと心細さに押し潰されそうだった。

『…っ、……うわあぁああぁ…っ』

言葉にならない呻きにも似た泣き声をあげて、裕太は泣き叫んだ。

小さい頃、喧嘩したりお母さんに怒られたり、そんなことですぐ泣いていた泣き虫な裕太のことを思い出しながら、今もそんな理由で泣いているんだったらいいのになんて、もう何もまともに考えることも出来ない頭の中で祈るようにそう願っていた。

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