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『………ごめん。』
『裕太は何も、悪くないのに。こんなの…おかしいよ、わかんない。いくら考えてみても、全然…わかんないよ…っ』
堰を切ったように泣き出したAをやっと抱きしめてしまうと、ずっと記憶の底に沈めていたあの日の感覚が、まるで頭の中と身体中の隅々にずっと張り巡らされていたみたいに波打ちながら蘇ってくる。
『……裕太が悲しいと、私はもっと悲しいみたい』
病院の冷たい廊下の床で、Aは俺のことをしっかりと強く抱き留めてくれていた。
こんなに、俺よりも小さい身体で。
あの時には、そんなことを考えられる余力もなかった。
『……ありがとう。A。』
Aがいなかったら、俺はどうやってこのどうしようもない悲しみから抜け出せていたかわからない。
ねえ、だけど。
Aがくれる切なさからは、どうやって抜け出せるのかな。
どうやって救い出してくれるの?
助けてよ。
俺の前にまた、あの頃みたいに現れて、笑って。
俺だけを見て、笑って。
Aを笑顔にする、たったひとつの理由になりたかった。
Aを悲しませる、たったひとりの存在に。
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作者名:EM | 作成日時:2021年10月16日 3時