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境内を抜けると、夏の終わり独特の、懐かしくてせつない匂いに包まれた。
毎年衣月先輩の命日には、衣月先輩の同級生や先輩、後輩で集まっている。
今年も、北山先輩の姿はなかった。
だけど先輩が衣月先輩のところに毎年赴いていることは知っている。
これまでに裕太と一緒に衣月先輩のお墓を訪ねた時、北山先輩の姿がそこにあったから。
「…そういえば、裕太は?」
「今年は一人で来たの」
緩やかな坂道を下って行く途中、ちらほらと知っている顔とすれ違い言葉たちをいくつか交わした。
「そっか。まだ何日かこっちいるよね?ゆっくりお茶でもしようよ」
「うん。連絡する。」
手を振り合って別れてから、お花屋さんに立ち寄り、それから衣月先輩のところに足を運ぶ。
やっぱりそこには北山先輩の背中があって、少し離れたところからでもすぐにわかった。
衣月先輩の周りには沢山のお花やお供物が所狭しと並べられていた。
変わらずに、たくさんの人から愛されている。
「……A?」
背中に聞こえた声に振り向くと、黒いスーツ姿の裕太が弱々しく眉を下げた。
「裕太」
「…声、かけないの?」
そう言って北山先輩の方に視線を送る裕太に、首を横に振って答えた。
「また、出直そうかな」
「…うん。」
二人とも手に花束を持って、さっき上ってきた坂道をゆっくりと一緒に下る。
裕太とはしばらく会っていなかったけれど、それでもこうやって二人がどうしても繋がっていることを思い知らされてしまう。
繋がっていないと壊れてしまうような夏の夕暮れを、私たちはこれまでにもうどれくらい一緒に過ごしてきたんだろう。
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作者名:EM | 作成日時:2021年10月16日 3時