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「……嘘だよ。だって裕太、意地悪だし…どうして今、そんなこと言うの……?」


ずっと堪えていたのについに泣きそうになってしまうから、裕太の胸を手で弱く押した。


「いいよ別に。信じてくれなくても」

「…じゃあ北山先輩の所に行かせてよ。私のことが好きだったら、」

「Aなんで泣いてんの?辛いからでしょ?」

「裕太が…行かせてくれないからでしょ」


反抗する感情を示さなきゃいけない気に駆られて、もう一度、拳を作って裕太の胸に押し当てる。



こんなに弱い力じゃ、離れられるわけないとわかっていながら。



「ミツのことを好きなAはいつも泣いてる。これからだってきっとそうだよ。」



やっと身体を少し離して、私の濡れた瞼を裕太がそっと優しく撫でた。


「Aだって、わかってるでしょ?ミツにとって衣月先輩以上の存在になれることは絶対にないって。片想いが一生続くんだよ。一生片想いのままなんだよ。」

「それでもいい。どうして…いけないの?」

「…そうだよね。好きでもない人とそういうこと、できるんだもんね、Aは。」

「っ北山先輩は違う、」


「ミツの為に、そうやって慣れようとしてきたの?」


太輔とのことを言ってるんだ、そう思いながら、何も言い返せなかった。

別にそういうつもりじゃなかった。だけど、付き合ってなくてもよかった。太輔のことだって、ちゃんと好きだった。


「……わかったよ。行かないから。」


裕太が身体を離すのと同時にゆっくりと立ち上がり、寝室に向かう。


「ゆうくん、ソファで寝てもらってもいい?ごめんね。」


そう言いながらドアを閉めると、裕太はもう何も言わなかった。


ベッドに入って、北山先輩の声が耳から離れずにスマホを握りしめる。




あんなに寂しそうな声をした北山先輩は、こんな夜をいままでどうやって一人で越えてきたんだろう。




本当は、聴かせてあげたいんじゃない。




北山先輩の声が、聴きたい。







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Ki→←.



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EM(プロフ) - mgさん» そうだったんですね、嬉しすぎます…!励みになります、ありがとうございます。 (2021年9月19日 2時) (レス) id: 3db90ced5d (このIDを非表示/違反報告)
mg(プロフ) - 私が初めて登録した、お気に入り作者さんはEMさんなんです。また新作を読む事ができて、うれしいです! (2021年9月5日 20時) (レス) id: 4c5f83450d (このIDを非表示/違反報告)
EM(プロフ) - mgさん» またmgさんに読んでいただけて嬉しいです。ありがとうございます! (2021年9月5日 3時) (レス) id: 3db90ced5d (このIDを非表示/違反報告)
mg(プロフ) - 新作、嬉しいです。これから、とっても楽しみです。がんばってください! (2021年9月4日 5時) (レス) id: 4c5f83450d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:EM | 作成日時:2021年9月3日 20時

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