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マンションの前でタクシーが停まると運転手さんも一緒になって声を掛けてくれて、私に膝枕をされる体勢で眠っていた北山先輩がうっすらと目をひらいた。


「お客さーん、起きてあげてー」
「先輩っ」

「ん……」


目を擦りながら、ゆっくりと身体を起こす北山先輩の肩を抱くようにしてタクシーから降りる。


「こりゃあ上司の面倒見るのも大変だねぇー…お姉さん、後は大丈夫かな?気をつけてね。」


先輩、と呼んでいたからかタクシーの運転手さんは私達が一緒に働いていると勘違いしていたようだった。


「…御迷惑をおかけしました、ありがとうございました」



辛うじて自分で足を進める北山先輩の肩を支えながらどうにか私の部屋まで辿り着き、そのまま先輩を寝室まで連れて行く。


「ジャケット、脱がせますね…ごめんなさいっ」


まだ半分夢の中にいるような北山先輩は「んん…」と漏らしながら、ほとんど目を瞑ったままで器用にネクタイを緩める。

ジャケットをハンガーにかけ、ベッドの上に横になってまた寝息を立て始めた先輩にタオルケットを掛けた。


電気を消し、寝室とリビングを仕切るスライドドアを閉める。

予備のブランケットを出して、リビングのソファに上に置いた。


「あ!」


クローゼットの中から自分のパジャマを取り出してくるのを忘れていたことに気がついて、音を立てないようにそっとまた寝室に戻る。


「……ねぇ」


北山先輩を起こさないように、スマホの液晶の光だけを頼りにクローゼットに手をかけたところで、暗闇の中で呼ばれるからびくりと肩が揺れる。


「っはい!?」


酔い潰れてたとはいえ、勝手に私の部屋に連れて来てしまったわけだから、やっぱりマズかったよね…。

また先輩に嫌われちゃうな…、この期に及んで私はそんな自分勝手なことを考えてしまう。


「……こっち、きて」


北山先輩の表情が見えずにいるから、とりあえず手探りでベッドに近づくとグイっと手首を引かれて躓いてしまった。

ベッドにダイブしたような体勢になって、慌てて身体を起こそうとするけれど暗くて上手く身動きが取れない。

瞬間、くるり、と身体を返されてベッドの上に仰向けになる。


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EM(プロフ) - mgさん» そうだったんですね、嬉しすぎます…!励みになります、ありがとうございます。 (2021年9月19日 2時) (レス) id: 3db90ced5d (このIDを非表示/違反報告)
mg(プロフ) - 私が初めて登録した、お気に入り作者さんはEMさんなんです。また新作を読む事ができて、うれしいです! (2021年9月5日 20時) (レス) id: 4c5f83450d (このIDを非表示/違反報告)
EM(プロフ) - mgさん» またmgさんに読んでいただけて嬉しいです。ありがとうございます! (2021年9月5日 3時) (レス) id: 3db90ced5d (このIDを非表示/違反報告)
mg(プロフ) - 新作、嬉しいです。これから、とっても楽しみです。がんばってください! (2021年9月4日 5時) (レス) id: 4c5f83450d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:EM | 作成日時:2021年9月3日 20時

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