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「おじゃまします」
「あんまり…、見ないで」
部屋に入ってすぐに暖房と加湿器をつけ、クローゼットから太輔が着れそうな服を探す。
「全然散らかってないよ。Aの匂いがする」
リビングにいる太輔の声を聞きながら、大きめのパーカーをみつけて広げてみる。
「…これ、北山くん?」
突然、無防備な耳に入ってきた言葉に、寝室から顔を出すと太輔が写真立てをまじまじとみつめていた。
「っだめ恥ずかしいから、みないで」
棚に飾っていたままだった、高校生の頃に凛とミツ、ニカと私で撮った写真。
「だって飾ってあるんだもん。Aも凛ちゃんも雰囲気少し違うね、可愛いっ」
そう言うと、太輔は写真立てを持った手を私が届かない高さに挙げて、取らせないようにしながら笑う。
「……っもう、」
返してくれないから諦めて、寝室にパーカーを取りに戻った。
クローゼットを閉めて、ふと思い返す。
そうだ。
太輔が初めて私の部屋に来たあの夜は、部屋の電気もろくに点けなかったし朝にはすぐ部屋を出たから、あの写真にも気がつかなかったんだ。
「ひさしぶり」
不意に後ろから両腕で掬うみたいに抱きしめられて、久しぶりに太輔の匂いと温度に包まれていることが全身でわかると、胸がぎゅっとなる。
「すごく、長かった…」
私の首筋に顔を埋めてから、耳元で囁いた。
「たったの一週間なのに。ずっとこうしたかった。」
太輔に言われて初めて、それしか経っていなかったことに気がつく。
こうして抱きしめられることも、キスをしたりすることも、もっとずっと、していなかったように思えた。
太輔に触れられなかった時間がすごく、すごく長く。
「…太輔?」
私を抱きしめている太輔の手には、まだ、写真立てがあって。
そこに視線を落とすと、あの頃のミツが、こっちを見て笑っていた。
「…Aは、高校生の頃に付き合ってた子のことをまだ好きなんだと思ってたんだけど、違ったね。」
鼓動が、速くなる。
「Aが付き合ってたのって、写真に映ってる黒髪の子でしょ」
「……うん」
唐突にそんなことを言う太輔の顔が見えなくて、不安になって。
だけど次に聞こえた言葉に、私は何も、考えられなくなる。
「北山くんに会った時、すぐわかったよ。Aは、この人のことをずっと……好きなんだって。」
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作者名:EM | 作成日時:2016年8月16日 2時