検索窓
今日:10 hit、昨日:1 hit、合計:116,179 hit

45 ページ5

.









お店を閉めた後、カウンターに座ってメモを取った内容を整理していると、事務室から出てきた藤ヶ谷さんが隣に座る。


「…勉強熱心だね」

「いえ、物覚え悪いからとにかく書かないと覚えられなくて…」

「教え甲斐があるよ」


藤ヶ谷さんが私の頭にぽんぽん、と軽く触れた。



裏口から一緒にお店を出て、鍵をかける。


「今日はありがとうございました」
「おつかれさま。」

「お疲れ様でした。おやすみなさい」


軽く会釈をして、家の方向へ向き直って歩き出す。


「Aちゃん」


手首をそっと掴まれて振り返ると、藤ヶ谷さんはすぐに手を離す。


「やっぱり家まで送らせて。お願い。もうこんな時間だから」


そう言われて腕時計を見ると、23時を過ぎていた。

お店から家までの帰り道には慣れているけど、多分断っても藤ヶ谷さんはどうしてもと言ってくれるんだろう。

そう思って、断るのを諦めた。




「今度、私も凛に藤ヶ谷さんのこと聞いてみます」


横に並んで歩きながら、思い出して言った。


「いいよ。別にやましいこと何もないもんっ」

「…言いましたね?私、凛と中学校から一緒で、なんでも話せる仲ですから」

「なにそれー?Aちゃんの方が俺よりも凛ちゃんと仲良いっていう脅し?のろけ?」

「そうですよ、どっちもです」
「ふふふ」


そんな話をしながら、あっという間に家の前に着く。


「すみません、わざわざ家まで送って下さって。有難うございました。」

「ううん、ごめんね。お節介しちゃって」
「いえいえ。藤ヶ谷さんもお気をつけて」

「うん、ありがと。じゃあまたね。おやすみ」


部屋に入って鞄から携帯を取り出すと、数時間前に、凛からメッセージが届いていた。


“太輔くんと一緒に働いてるんだって?”


明日返信をしようと思って携帯をテーブルに置き、洗面所へと向かった。


.

46→←44



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (143 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
276人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:EM | 作成日時:2016年8月16日 2時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。