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「Aおっぱよー」


店内に入るなり、ゆるふわ大学生がこっちを見て手を振っているから、私はまだ寝ぼけているのかもしれないと思って目をこする。


「ガヤがそう呼んでるから、俺もAって呼ぶことにしたー」

「そう、ですか…。」


今日も長い一日になりそうだ…そう思うともう既に帰りたくなる。

ガヤって誰だろう?ああ、太輔かな…。そんなことを考えながら更衣室で着替えていると、携帯が鳴る。


“今日、後でそっち行くね”


早く来て、と泣いている絵文字を沢山つけて太輔にメッセージを返した。






「今時の大学生って、皆あんな感じなの…?」


出勤した太輔と一緒に、事務室で軽く食事を摂る。


「…Aちゃんだって、一応まだ大学生でしょ。むしろ俺が、聞きたいくらいだよ」


ふふ、と笑う太輔とは逆に私は溜息をついてしまう。


「でも玉、いい子だよ?あんな感じだけど、仕事はちゃんとやってくれてるし。新しいお店に玉にも来てもらうつもりだよ」

「そうなの?」

「うん。家から近いからその方がいいって本人も言ってて」

「…そっか、新しい店舗の事も、そろそろ本格的に始めなきゃいけないね」


食事もそこそこに、太輔がパソコンに向かう。


「これからもっと忙しくなるね」

「うん。だけどまだ時間あるし、今から少しずつやっていけば、大丈夫だよ」


そう言って、太輔は引き出しから取り出した眼鏡を掛ける。


「…私に出来ることがあれば、何でも言ってね」


思わずその横顔に見とれていると、パソコンの画面を見たまま太輔が私の手を取った。


「ありがとう」


ん、と言うと目を瞑って、そのまま少し口角を上げながら顔をこっちに向ける。

その唇にキスをひとつ落とすと、太輔は満足そうにして、またパソコンの画面に向かった。



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作者名:EM | 作成日時:2016年8月16日 2時

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