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「玉森裕太です。よろしくおねがいします」
今日が初日だからAちゃん宜しくね、店長がそう言うと私の肩をぽんと叩いた。
新しいアルバイトの子が来る事を当日に知らせるのはやめてほしい…、と毎度の事ながら、そう思う。
「大学では、玉ちゃんって呼ばれてまーす」
背が高くて女の子みたいに肌が白くてくりっとした目で、だけどゴールドのピアスや指輪やバングルをやたらと着けていて、いかにも今時の大学生という感じだ。
「芦屋Aです。宜しくお願いします。」
こちらこそよろしくでーす、そう言いながらエプロンを着ける。
「ねえねえ、Aちゃんいくつなの?」
「21歳です。大学四年生です。」
「へーそうなんだ。大学生に見えない。落ち着いてるねぇ。俺は大学一年生だよ」
「…玉森くん、」
「玉ちゃんでいいよ」
一つ咳払いをして、ペンを置いて言う。
「…どうして、初対面の人にそんなに慣れ慣れしくできるの?」
言葉を選んだつもりだったけどついそんな風に言ってしまって、だけどそれでも別に良いような気がしてしまう。
「…あ。俺またやっちゃった?あちゃー。気をつけてたんだけどな。ごめんなさいっ」
エプロンの紐を背中で結ぶのに苦戦していたのを中断して、はっと顔を上げてからかしこまったように頭を下げた。
「私には慣れ慣れしくても、良いけど、さ…」
「ほんと?よかった。じゃあこれよろしくっ」
そう言うとくるりと私に背中を向ける。
「Aちゃんにはいいんでしょ?なら問題なしじゃん。これ結んでくださーい」
マイペースすぎるのに、なんだか憎めないな…。
既にそう思ってしまいながら、エプロンの紐を結んであげると「Aちゃん、ありがとう」と嬉しそうに笑うから、つられて笑ってしまった。
基本的によくわからない鼻歌を歌ってる玉ちゃんに無理矢理メモを取らせながら仕事を教えて、なんとか無事に初日を終えた。
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作者名:EM | 作成日時:2016年8月16日 2時