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凛とミツと、お店の前で別れた。
腕時計を見ると、太輔が乗る終電の時間まであと数分しかないことに気がつく。
「…急がなきゃ」
そう言って、太輔の腕を引きながら小走りになる。
「Aー?速いよ、待って?間に合うって」
「走らないと無理だよっ、ほら早く」
太輔が、引っ張られている腕に力を入れるから前に進めなくなって立ち止まってしまう。
「太輔は、もう若くないから走れません。」
私の手を離してわざとのろのろと足を進めるから、焦っているのについ笑ってしまいそうになって、後ろにいる太輔に背を向けながら二、三歩進む。
「…もう、ふざけてないでっ、」
言いながら振り向くと、少し後ろにいたはずの太輔に思いきり抱きしめられる。
「ふざけてない」
呟くようにそう言ってから身体を離して、ほんの少しの街灯と、月明かりが太輔の表情を映した。
「もう歩けない、って言ったらどうする?」
私の肩に手を回して、耳元で囁く。
「……酔ってる、の?」
二人の周りに浮いているようなワインの匂いと、太輔のいつもと同じ甘い香りが混ざり合って漂う。
「酔わないって、言ったでしょ。Aといると、ドキドキして酔えない。酔っ払ったら理性なんてどっかに飛んでっちゃうんじゃないかって思って…酔えない」
ゆっくりと唇が近づいてきて、重なる。
「……飛ばしてみても、いいよ」
唇を離して、太輔の目を見ながら言った。
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作者名:EM | 作成日時:2016年8月16日 2時