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色づいていた葉が落ちて、いつのまにか裸になった細く伸びる枝たちが目立ってきていた。
もっと秋が長ければいいのに、と、毎年秋の終わりにはそう思ってしまう。
「お疲れ様っ」
仕事終わりに凛と待ち合わせをして、いつものお店に太輔と向かった。
乾杯を済ませると、凛がすぐに今日あったことを話し始める。
「…それでね、落とした紙拾おうとして、階段から落っこちたの」
「えっ!大丈夫だったの?」
「うん。三段目くらいから落ちたから」
そう言いながら、凛は腕に出来たかすり傷を私と太輔に得意気に見せた。
「なんだぁ…びっくりさせないでよ」
「でも、大怪我してたかもしれないんだから。凛ちゃん、気をつけなきゃだめだよ?」
太輔がそう言うと、凛が「はーい」と子供みたいな返事をするから三人で笑った。
「…あ、ちょっと電話出るね」
「うん」
三杯目のビールで乾杯をしてからすぐに、テーブルに置いていた凛の携帯電話が震えて、それを持った凛が席を離れた。
「…ねえ」
隣に座る太輔の声に「ん?」と答えると、顔が近づいてくる。
お互いの鼻先が触れそうになるところで「すると思った?」と笑いながら太輔がグラスを取った。
ふふふ、と目を細める太輔の横顔につい見惚れてしまう。
「なーに?」
「…太輔の横顔、綺麗だなって」
「もう、Aちゃんね、」
言いながら、隙をつくように太輔が頬にキスをする。
してやったりな顔をする太輔が可笑しくて一緒に笑っていると、凛が席に戻って来た。
「あのさ…今からミツ、来てもいい?」
どこか居心地悪そうに、私と太輔に訊く。
「あ、凛ちゃんの彼氏?もちろんいいよ、ちゃんと会ってみたかったんだ」
太輔がすぐにそう答えると、凛が不安そうに私の顔を見るから、笑って頷いた。
「…急に、ごめんね。ミツも友達と飲んでたみたいで、そのままこっち来るって」
「ううん。いいよいいよ」
そう言うと太輔が手をあげて店員を呼び、もう少し広い席に移動させてもらう。
あ、いいですよ、僕持って行きます、と太輔が店員に言いながら、飲みかけのグラスを受け取ったトレーにのせて運んだ。
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作者名:EM | 作成日時:2016年8月16日 2時