Flamingo -2- (ページ28)

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「昨日、そんなに飲んだの？」

今日凛が来ることをすっかり忘れていて、だけど凛は「そうだと思った」と明らかに今起きたばかりの私の姿を見ながら笑った。

「そんなことない、と、思うんだけど…」
「覚えてないほど飲んだの？」

私は殆ど使わないから、ほぼ自分のものみたいになってしまっているエプロンを着けた凛が、遅いお昼ご飯に素麺を茹でてくれる。

「…いや、何もかも…覚えてる」

そう言うと凛が振り返って、表情だけで問いかけてくるから「そういう意味じゃ、ないよっ」と、自分でもどういう意味だろうと思いながら咄嗟に答えた。

「…楽しくなかったの？」

体育座りをして自分の膝に顎を乗せながら答える。

「楽しかったよ…、すっごく。」

素麺を食べながら、扇風機の音が部屋の中に浮かぶ。

「それは、大変だ」

ふふ、と嬉しそうな顔になって笑う凛が、扇風機の風量をひとつ下げた。

「太輔くんには何か言われた？」
「…何かって？」

「具体的に、好きとか、付き合いたいとか」
「言われてない…けど」

「けど？」

「…キス、した」

凛を見ると、何も言わずに目を見開いて続きを促す。

「した、けど…、藤ヶ谷さんにはそれが特別なことだったとは思えない…っていうか」

「特別であってほしい？」

真っ直ぐ私を見て訊いた凛に、少し躊躇って、首を横に振って返事をする。

「…そういうの、めんどくさいなって思っちゃう。今までだってなんとなく誰かと付き合ってさ、それで…それが、丁度良いっていうかさ。」

「なんとなく…かぁ」

凛が、視線を床に落とした。

「でも、少なくとも太輔くんはさ、なんとなく付き合うような相手じゃないと思うよ」

「…だから、怖いの」

馬鹿みたいだよね、と自分でもそう呆れながら、凛を前にして本音がこぼれてしまう。

「ちゃんと付き合って…離れたくなくなっちゃったら、どうするの？」

顔を上げられないでいると、凛の声が優しく降ってくる。

「離れなければいいんだよ。太輔くんは、急にいなくなったり、しないよ。」

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