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「Aちゃん」
お店を出ようとすると、藤ヶ谷さんに呼び止められて振り向く。
「傘ないでしょ?一緒に帰ろ」
「いや、でも…」
「濡れて風邪でも引いちゃうと困るから。ね?」
「家近いので、大丈夫です」
「あ、そうだよね…初対面の女の子を家まで送るなんてだめだよね、ごめんごめん。」
「いえっ、そうじゃなくて、」
「じゃあさ、近くのコンビニまで送らせて」
このまま言っても折れてくれそうになくて、結局、途中まで一緒に傘に入れて貰うことになった。
一本の傘の下で、体が触れる位に近くで並んで歩くから、今日、時折鼻にした甘い香りは藤ヶ谷さんからしていたんだと気がつく。
「Aちゃん、ちょっと待ってて」
コンビニの前に着くと、藤ヶ谷さんがそう言って中に入って行くからそこで待ち、すぐに出て来た。
「はい、これ。次はまた来週かな?今日はありがとう。気をつけて帰ってね。おやすみなさい」
そう言いながら買ってきたビニール傘を私に差し出して、お礼もろくに言えないうちに行ってしまった。
なんだかすっかり藤ヶ谷さんのペースに巻き込まれてしまう。
だけど、優しい人だなと思う。
新品のビニール傘をさして、私はまた雨の中を歩き出した。
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作者名:EM | 作成日時:2016年8月16日 2時