Flamingo -2- (ページ20)

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「A、今日は本当にごめん。」

戸締りを終え、裏口のドアの前に立つと、藤ヶ谷さんが改まったように言った。

「…えっ？」

「俺のせいで火傷させちゃったし、危ない目にも遭わせちゃって」

「藤ヶ谷さんのせいじゃ、」

「女の子なのに、こんな見える所に火傷負わせちゃって…」

火傷した所がまだ赤くなっている私の手を取って、申し訳なさそうにみつめる。

「ごめんなさい」

と頭を下げるから、やめて下さい、そう言うとやっと藤ヶ谷さんは顔を上げる。

「もし跡になって残っちゃったら、俺が責任取ってAちゃんのこと一生守るから」

冗談だと思って、何ですかそれっ、と笑ってしまった。

「本気だよ？」
「からかわないでください」

むすっとした顔になるから、つい言ってしまう。

「…じゃあ、このまま跡になって、消えなくなっちゃってもいいです。」

そう言って自分の手の甲を眺めながら笑うと、藤ヶ谷さんが私の背後にあるドアに手をつく。

「…本気だって、言ってるでしょ？」

唇が近づいて、触れてしまいそうな距離に身を引くと背中がドアに当たるから、咄嗟に後ろ手でドアノブに触れるけどその右手もすぐに捕えられてしまって反射的に顔を横に背けた。

「ごめん、冗談だよ。」

そう言うと藤ヶ谷さんはドアを開けて先に出るから、私も続いて外に出た。

たった今起きた事は夢だったのかと思うくらい、藤ヶ谷さんは何事もなかったかのように、ドアに鍵をかけると明るい表情をして歩き出す。

本気だって言った藤ヶ谷さんの声も表情も、全然冗談じゃなかった、少し先を歩く後ろ姿をみつめながら、まだドキドキしてしまう胸の中を落ち着けようと小さく息を吸う。

「…A？どしたの？」

振り返って言うと、困ったように笑って手招きをした。

そういえば、いつの間にか藤ヶ谷さんは驚くほど自然に私のことを名前で呼び捨てにしている。

ふと、腕の中の温もりを思い出してまた急に恥ずかしさが込み上げる。

「おいで」

返事をする間もなく私の右手は、藤ヶ谷さんの左手に引かれる。

「やっぱり痛むよね……ごめんね…。」

私の顔を覗き込むと凄く申し訳なさそうに言うから、その優しさに、つい笑ってしまう。

「…大丈夫ですよ」

本当に？と怪訝そうに訊く藤ヶ谷さんの香水の匂いが、夜風に重なり私の鼻を擽った。

夏は嫌いだったけれど、夏の夜はそんなに嫌いじゃないかもしれない、そんなことを想った。

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