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シャワーを浴びて、まだ眠れそうになかったから音量を小さくして一人でテレビを観ていると、凛の携帯がまた鳴った。


画面を覗くとさっきと同じ名前が表示されているから、気が引けるけど寝ている凛の腕を軽く揺らして声を掛ける。


「…凛、電話だよ。ミツから」


んん…、と小さく言いながら、凛は壁の方を向いて布団を被る。

これはもう起きないな…そう思っていると着信が止まった。




しばらくするとまた携帯が鳴り、こんなに何回も掛けてくるなんて何かあったのかもしれないと思い、今度は強めに凛の体を揺らす。


「凛!凛起きて、電話!」
「んんん、ん…」


目を閉じたままゴニョゴニョと何か言ってるけど、完全に寝惚けていてまともに起きる気配がない。

凛は昔から、一度寝てしまうとなかなか起きなかった。


まだ煩く鳴り続けている携帯を睨んで、大きく溜息をついてから指を動かした。


「…なにっ?」


思わず大きい声が出て、しまったと口を手で抑える。


「……何怒ってんの?」


電話の向こうから聞こえてくる声に、ああ、こういう声だった、と、思う。


「こんな遅くに何?凛、もう寝ちゃったよ」
「…こんな遅くに、何やってんの?おまえは」


ふ、と鼻でわらうように聞こえて、このまま切ってしまおうかと思うとミツが口を開く。


「…凛、本当に寝てるの?」
「とっくに寝てる」

「一人で何してんの?」
「なんでも…いいでしょ」



「A」



急に名前を呼ばれて、頭の中とは裏腹に、勝手にぎゅっと胸の奥を掴まれたみたいになる。


「A」

「用事ないなら切るね」
「待てよ」

「もう…っ、なに?」
「なんでさっきからそんな怒ってんの?」

「怒ってないっ」


ふふっ、とミツが今度は声を出して笑う。



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作者名:EM | 作成日時:2016年8月16日 2時

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