私を許さないでⅢ (ページ10)

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息抜き※ ページ10

田舎の夜は静だ。
冬でもなければ微かに虫が鳴く声が聞こえる程度で、喧騒とはかけ離れている。
しかしこの日は異なった。
汗の匂いに包まれている。
おまけに一糸纏わない姿で。
枕はいつもの絹でもサテンでもなかった。
筋肉のガッチリとついた逞しい腕。
それに頬を擦り付ければ、額に張り付いた髪をセドリックが払って耳にかけてくれる。
まだ荒い息を落ち着かせようとしているにも関わらず、この男は唇を降らせた。

「････っん、んん････は･･･」

薄く形のよい唇が音を立て離れる。
彼は片方の腕で私の身体を引き寄せると、肩に顔を埋めた。
この男、可愛い盛りの娘が居なくなって寂しいやら悔しいやらとごっちゃになっているらしく、その理解し難い感情を此方に当て付けてくる。
これが暴力でないからいいものの、これはこれで辛いのだ。役得ではあるけれど。

「････寂しいの？」

そう優しく問いかければ、彼はこてんと頷いた。可愛い。
今度は私が口付けた。
子供をあやすような触れあうだけのものだったが、それで満足そうにする。
仕事が大変になってきたのもあり(最近は仕事を求めて働くニフラー、いや仕事を求めて働く社畜になってきている)色々と溜まっていたのだろう。

「････スカーレット、僕ってさ････ん･･やめてくれよ、ちゃんとした話なんだから･･･んん」

「ん･･っん･･！･･何･･･？」

ふざけて唇を独占していたら軽く噛まれた。
痛い。
けれど不安が少し和らいだのか、先程よりも穏やかな表情をしていた。
まあ、ついさっきまで上の空というか･･･久しぶりに気を紛れさせるための行為だった気がする。無表情はきつい。

「･･･ちゃんと、父親をできているかな。」

不安げに、しかし何かの確信を持っているであろう表情で私に問う。
私としては何故そう思うのかと驚きはしない。
この人は周りが思うより子供だし、ふざけることもある。
でも直感が優れていて、思ったことはだいたい的を得ている。
だから恐らく、何らかの予感があってのことだろう。
一種の千里眼のようなものなのだ。

「えぇ、勿論よ。････父親という役割だけでいうならね。」

「え」

私はもう一度唇を奪うと、ポカンとした顔のセドリックを見下ろした。

「もう少し、素で触れあってあげたら？案外寂しいと思っているのはお互い様かもよ。お間抜け顔の闇祓い局長様？」

ほんの少しの嫌みを交えればセドリックはふと息を漏らした。

「･･･ほんと、君には敵わないよ。」

「あら、敵われちゃ困るわ。」