俺、北山んち、泊まります (ページ15)

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開いたドアの向こう

最初に見えたのは、泣きそうな顔で心配そうに中を見つめているマネージャーとスタッフ達

病人がいると伝えたから、防災センターが呼んだんだろう

救急隊の姿も見えた

「北山さん！藤ヶ谷さん！」

俺達の姿が見えてホッとした表情の皆

けれど、俺の腕の中の北山を見て、マネージャーは顔色を変えた

「北山さんっ！！！」

「すいません。北山を！」

「分かりました。」

救急隊に北山を渡す時、ちらっと見た北山は、俺に向かって小さく微笑み

「藤ヶ谷…」

そう呟いた

ゆっくりと俺の腕を掴んでいた北山の手が離れていく

思わず、その手を掴みそうになった

「大丈夫ですか？北山さん。」

「大丈夫です。」

マネージャーやスタッフに気丈に振る舞う北山

野次馬の姿を気にしたのか、救急隊が用意した担架にもゆっくりと首を振った

「…担架は…いいです…。大袈裟にしたくない…」

救急隊に支えられ、ゆっくりと立ち上がる北山

一瞬ふらついた体を救急隊員が、とっさに抱きかかえた

そんな当然の事にすら、胸が痛い

出来れば、その役割は俺がしたかった

「藤ヶ谷さんも念のため、病院に行ってください。」

「俺、大丈夫ですよ？」

「事務所命令です。お願いします。」

「…分かりました。」

俺は北山が先に乗った救急車に乗ることになり、マネージャーは別の車で救急車の後に付いてくることになった

救急車に乗り込むと、ストレッチャーに横たわっている北山が目に入った

「北山…」

呼びかけると、ゆっくりと北山が目を開ける

「藤ヶ谷も…一緒…？」

「うん。念の為に一緒に見て貰えって。」

「そっか…救急車も…藤ヶ谷と一緒なら…安心だな…」

「なんだよ。心細かったの？」

「…少し…ね…」

ふふっと笑った後、北山の手がゆっくりと俺に向かって伸びてくる

俺は…迷わずその手を取った

救急隊員がいるのに…

そんな事、気にならなかった

「傍にいるから…」

「ん…」

安心したように目を閉じた北山

救急車は、サイレンを鳴らしてスピードを加速していった

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