序章『千羽鶴と藤の御守り』肆 ページ5
夕食は豪勢だった。
エリコが呼びに来るわけだ、と呉羽は納得する。
と言っても呉羽はそれほど食べなかったのだが。
「呉羽ちゃんゆっくりして行ってね」
「あ、はい。ありがとうございます」
エリコの母親が呉羽とエリコが二人で遊ぶと言ったので席を外す。外はもう夕方で呉羽としては帰りたいのだがエリコがごねた。帰らないで、と。
エリコが行かせまいと抱きついてきて、それを引き剥がそうとしたのだが呉羽には筋力がない。昔から外で遊んできたエリコには勝てなかった。
結局ここでエリコの相手をする事になった。
「あ、そうだ、千羽鶴完成させるからちょっと待ってね。あと一羽取り付けるだけだから」
「うん」
エリコがタンスから取り出したのは色とりどりの折り紙で折られた折り鶴の束だった。赤、青、黄色、白、緑、青、桃・・・色の順番は不規則で気が向いたままに折って繋げている事が分かる。
白い折り鶴に糸を通してエリコは「出来た」と満足そうに小さく呟いた。
呉羽は手持ち無沙汰に持たせられていた藤の花の御守りをいじっていた。
「はい呉羽。これあげるよ。良くなったら外で遊ぼうね」
そう言いながらエリコは少し重みを感じる千羽鶴を呉羽に渡した。
筋力の無い呉羽は一瞬顔を顰めたものの笑顔になって「ありがとう」と言った。
そんな呉羽見てエリコは頷き、「私の努力を称えてくれても良いんだぞ?」と正直癇に障る声で呉羽に言う。
それを呉羽は華麗に無視し一つ一つしっかり折られた折り鶴を眺める。
日本では鶴が縁起の良いものとされている。
それが集まった千羽鶴もそういう理由で作られる。
呉羽の髪色と同じように白色の折り紙が三分の一程度をしめる千羽鶴。
「ああ、私厠に行ってくる」
「うん、外に誰かいるだろうし、場所は聞いてね。行ってらっしゃい」
大袈裟に手を振るエリコ。
私は藤の花の御守りをしまい、千羽鶴をその場においてその部屋を後にした。
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かなと - 編集画面の関連キーワード入力の下をよく読みオリジナルフラグをお外し下さい違反です (2019年8月18日 10時) (レス) id: ba1b78c8bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:マドレーヌ | 作者ホームページ:http://aIKtu&souselove
作成日時:2019年8月18日 10時