椿 (ページ10)

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甘さが丁度いいココアを飲んでいると、流星からの視線を感じて目線をあげた。

｢俺だからええけど、あんま男の家とか易々行くもんやないで？｣
｢……わかってる｣
｢ほんまかい｣
｢流星だから来たんだもん｣
｢…はぁ、なんかAって心配になるわ｣

呆れたとも言わんばかりにため息をつき、飲んでいたカップを置いた。

｢ねぇ流星、｣
｢ん？｣
｢聞きたいことある、いい？｣

私の真剣な眼差しを理解したのか、一旦視線を泳がせた。するとカップを持って私のソファーの隣へ座った。うーん、と考えるように唸って、まぁ大体察しはつくけどなぁ、と話始めた。

｢なんで１人暮らしなんかってことやろ？｣
｢うん、嫌なら話さなくてもいいよ、｣

｢うちなぁ、親が離婚したんよ。それで俺は母方の祖母の家がここにあるからってこっちに越してきてん。
でもまぁ、一緒に住みたくないって言われてな、金は払うからこの家で好きに住めーって感じやな。｣

｢……………｣

｢……A？｣

｢……流星、寂しいよね｣

いきなり違う土地に引っ越して知り合いもいないところで１人暮らしなんて、考えられない。そんなの寂しいにきまってる。それにまだ高校生なのに。

｢寂しいっていうか、まぁ、しょうがないしなぁ｣
｢しょうがない…か｣
｢俺がどうこういっても今さら変わらんしなぁ｣

なんて悲しそうに笑う流星を見て。涙が出てきた。驚く流星が見えたけど、もう涙でぼやけて見えないや。もー、なんで泣くん？って子供をあやすように流星は言う。

｢流星の変わりに泣いた｣
｢俺は男や、泣かへんよ｣

でもありがとなぁ、って私の涙を拭いながらにこりと微笑んだ。