椿 (ページ9)

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｢ちょーー綺麗ー！流星見てるー？｣
｢隣におるやろ！見てるわ｣
｢いつ見ても綺麗。ここは海が１番だよ｣
｢俺も越してきたとき思った｣

いいところやなぁ、と流星が海を見つめながら言うから少し誇らしくなった。そこから二人で何気ない話をし続けた。担任がうるさいだとか、食べ物は何が好きだとか、二人の間に流れる空気が心地好いと感じた。もっと流星のことを知りたいと思った。百合に報告しなきゃ、大友と百合以外に仲良くなれそうなひとに出会ったよと。すると冷たい何かが頬を掠めた。ポツンと。何だろうと思っていると流星が、雨や、と呟いた。

｢今日、雨なんて聞いてないよ｣
｢晴れてるしお天気雨やな｣

虹が出るかもなぁ、なんて呑気に空を見上げてる流星。段々、雨足が強くなってきた。

｢あかんな、びしょびしょや｣
｢もう解散する？｣
｢そうやなー、家遠い？｣
｢あっ、｣

そういえば今日はいつも送ってくれる大友がいないんだ。どうしよう。と悩んでも雨は強まるばかり。

｢とりあえず俺んち避難しよか｣
｢えっ、でも、いいよ｣
｢気にしないでええよ、俺ひとりやし｣
｢……うん｣

じゃあ、急ぐかー、と自転車を漕ぎだした。二つ返事で了解したけど、なんで流星１人暮らしなんだろう？でも聞いていいのかわからなくて黙っていたら、別に変なことしないから安心しぃ、って。そっちの心配なんて全然してなくて、恥ずかしくなりお腹に回した手の力を強めた。

５分くらいで着いたそこは、広い一軒家だった。玄関に入ると、ちょっと待ってて、といって流星はタオルを持ってきてくれた。お礼をして受けとろうとすると、タオルを頭にのせられわしゃわしゃっと犬にでもするように拭いてきた。

｢犬みたいやな｣
｢やめてよ、もー｣
｢わんっていってみぃ｣
｢おい流星｣

着替えにスウェットを用意してくれたけど、まぁ、当たり前に大きい。せっかく出してくれたし、制服も濡れてる事だし着るけど。流星こんなの着てるのか。巨人だな。するとリビングから着替え終わったー？て声がするから向かう。ちんちくりんって笑うんだろうな。

｢うわぁ、ちんちくりんや｣

やっぱり。予想通りだよ。でもかわええよ、なんて後付けの台詞なんて無駄無駄。あり余った袖を捲ってると、流星がココアを用意してくれた。

｢…ありがと｣
｢コーヒーよりココアがええかなって、｣
｢うん、ココアすき。頂きます。」

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