椿 (ページ8)

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流星のデートのお誘いに承諾すると、片方だけ出来るえくぼを見せてよっしゃーっと笑った。いつも大友と帰っているけど、今日はちょっと会いたくないし、会っても話せる気がしないから丁度いい。用事ができたから先帰っててね、とラインを入れた。

教室に戻ると案の定先生に怒られ、百合には心配したんだから！と怒られた。今日は五時間目までだったからHRを受けてあっという間に放課後。大友からは、わかった。遅くならんよう気を付けるんやで。と返事が来ていた。

隣を見ると、机に突っ伏して寝ている流星。いつ寝るタイミングがあったんだ？この短い時間で。本当に彼の睡眠力は信じられない程だ。

｢ねぇー、放課後だよ｣
｢……｣
｢起きてよー｣
｢…ん｣
｢流星ー｣
｢…なに｣

｢デート…しないの？｣
｢する｣

デートという言葉に反応したのか体を起こして伸びをした。寝てるときも寝起きもイケメンなんだなぁ、このアホは。ていうかデートってどこ行くんだろう、こんな何もない田舎で遊べるところなんか限られてる。

｢ねぇ、どこ行くの？｣
｢あー、俺こっちのこと全然わからんからさぁ、案内してよ｣

そうか、流星はこっちきて間もない。私も転校したとき大友が案内してくれたなぁ。あの頃は子供だったから手繋いでたなぁ、懐かしい。昔を思い出してたら、はよいこーとなんだか楽しそうな流星が私の手を引いて教室を連れ出した。

｢Aってチャリ？」
｢歩き｣
｢まじか、じゃあ後ろなー｣
｢え、いいよ、重いし歩くよ｣
｢重いのはしょうがないとして歩くと足手まといなんやけど｣

なんて言うから大きい背中を殴ってやった。いたっ！て声は聞こえないふり。
後ろにのって、大友と違う流星の香水の香りを感じながら少し寂しくなった。

｢どこいく？｣
｢うーん、とりあえず海いこ｣
｢おぉーいいやん｣
｢重くない？大丈夫？漕げる？｣
｢足おれそうやけど頑張るわー｣
｢このやろ｣
｢ふふ、じゃあ行くで｣

大友もいつか後ろに夏芽ちゃんのこと乗せるのかな。そうしたら私は大友から離れなきゃいけないね。多分、というか絶対泣くだろうけど、大友が幸せならそれが１番だよね。また泣きそうになっていると、磯の香りが強くなってきた。あぁ、海だ。夕日でキラキラ輝いている。ここらへんでええか、と自転車を止めて二人で岩場に座った。

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