椿 (ページ7)

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夏芽ちゃん、と口から溢れた言葉に藤井君は反応して、私の見ている方へ目線をずらした。すると藤井君はなにも聞かず、ペットボトルを飲み干した。

なんで一緒に食べてるの？やっぱり大友は心配性だから？それか夏芽ちゃんが好きだから？もしかして付き合ってるの？夏芽ちゃんにはコウがいるでしょ？私の方が絶対大友のこと好きなのに。なんて言えるわけ無い言葉が頭の中をぐるぐる巡る。

｢……………A！」
｢えっ？なに急に大声だして｣
｢あほ、さっきから呼んどったわ｣
｢あー…ごめん｣

｢もう時間だね、教室戻ろっか、｣
｢そんな泣きそうな顔で戻るん？｣
｢………え？｣

藤井君は気付いてた。我慢した涙を。

｢よくわからんけど、泣きたいなら泣け｣

そういうと腕を大きく広げて、ほらー飛び込んでこいー、とふざけた。なんだか藤井君らしくてアホっぽくて笑いながら涙が出てきた。さすがに私からは抱き締められなかったけど、近づいたら優しく肩を寄せ髪を撫でてくれた。

｢あいつ浮気ヤローなん？｣
｢…違うよ、私の彼氏じゃないもん｣
｢あの女の子と付き合ってるん？｣
｢…………なのかなぁ｣

改めてそう考えると涙が止まらなくなった。再び泣き出した私に藤井君は抱き締める力を強めた。

×

落ち着いた頃には授業も中盤くらいの時間になっていた。あー、二日目からサボっちゃった。なんの授業だったっけ。なんて考えてると藤井君が私のスマホを勝手に取ってきた。取り替えそうにも身長差がありすぎて不可能だった。

｢ちょっと！なにすんのー！｣
｢俺のラインいれといた｣

ふふっ、と満足気に笑いながらRyuseiというアカウントを見せてきた。りゅうせい？そういえば、流星って名前だった。顔に似合った名前だなぁなんて感心。

｢流星…って綺麗な名前だよね｣
｢…なぁこれから、流星って呼んでや｣
｢えっ！馴れ馴れしくない？大丈夫？｣
｢俺も名前で呼んでるやん｣

突然の提案に驚く私に、もう決定やからと笑った。

｢りゅ…うせい…｣
｢なに｣
｢流星、流星｣
｢ふふっ、なんなん｣
｢練習してる｣
｢あっそ｣

｢流星｣
｢はいはい｣
｢…ありがとう｣

お礼を言うと一瞬驚いた顔をして、目線をそらして何か考えていた。どうしたんだろう。次に流星が言った言葉はまったく予想もしていないものだった。

｢お礼にさ、今日放課後俺とデートしてよ｣

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