物語が始まる前に【ハリー・ポッター】 (ページ1)

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夢に迷い込んだ夢ページ1

多分、これは夢だ。

　鳴海さくら、現役の高校一年生。黒髪黒目に平均的な身長体重の、量産型日本人だ。

　そんなジャパニーズ女子が、外国のヴィンテージが香るような建物の中にいるのは、どういうことだろうか。天井はずっと上にあり、そこについた窓は光に反射しステンドグラスのような神秘さを放っている。大理石の階段は何処までも続いていくようだし、目の前に立ちはだかる扉は限りなく大きい。

　吐息が出るほど美しいが、これが量産型日本人の家であるはずがない。ここだけでも一軒家がすっぽり入ってしまうようなサイズなのに、部屋はまだまだありそうだ。これが自分の家だったら、さくらは何処かの王女だろうか。

　目覚めたら、ここにいた。ファンタジー小説の王道ストーリーの始まりのようだが、さくらの頭はそんなにメルヘンチックな構造にはなっていなかった。ただただ、唖然。だが王道ストーリーは始まっているようだから、逃げ場はないらしい。となると、淡い光が現れて、神のお告げをよく聞きなさい、なんて言う頃合いだ。さあ、神様、哀れなるジャパニーズ女子に有り難き予言を＿＿

「君は一体、ここで何をしてるんだ」

「＿＿おおっ、神の声が聞こえる！」

「ふざけているのか？」

　そうなのです。自分は今ふざけて＿＿え？

　胸の前で握っていた手を思わず離し、声のした後ろへ振り向く。そこには神々しいマリア様＿＿ではなく、天使の輪を描いた眩しいプラチナブロンドをオールバックにした、まだ幼い少年が立っていた。怪訝そうだった顔が、少しの間だけ固まる。

「＿＿君、ここが何処だか知ってる？」

　出来るだけ愛想良く話したつもりだったが、少年は目を点にし、はあ？と呆れた様子の声色で溜め息を吐いた。腕を組み、上から品定めをするようにさくらを見る。そして当たり前だろうと言わんばかりの目をしながらも、教えてくれた。

「ここはホグワーツ魔法魔術学校だ」