第7話 王様 ページ9
ついにヴィクトルの待つ長谷津に着いた。
駅の近くだと言うのに、人はまばらである。
(まだ朝の9時だからか。)
大きな音を立てて開くシャッターを横目で見ながら、商店街を歩く。
しばらくすると、アイスキャッスルはせつという建物が見えてきた。
(この建物のどこが城なんだ?)
首を傾げながらも、中を覗いてみる。
すると中にいた女の子がこちらに気づく。
「ッキャーーーーー!!!」
「っ!?」
顔を見た瞬間、悲鳴をあげられた。
(僕が、不審者にでも見えたのかな?)
数分後、どうやら僕のことを知っていたらしく、飾りたいからサインをくれと言われた。
その代わりに、まだ誰もいないリンクで練習させてくれるらしい。
彼女はサインを受け取ると、業務に戻っていった。
早速、準備運動をした後スケート靴に履き替える。
(この前のグランプリファイナルの曲を滑ろうかな。)
自分の意識を深く沈めると同時に、役のイメージ像を明白に思い浮かべる。
リンクに近づくにつれて、卯月Aの存在感が消えていく。
シャッ
リンクの中央に立ち、動きを止める。
(このリンクには、数百もの観客がいる。)
そして、力強く滑り出した。
(俺は、この
俺が支配するのは、
・・・そんなことできるはずがないって?
いいや、できるね。
なぜなら、ここでは俺が全てだからだ!)
人を見下した笑いを浮かべながらも、自分の魅力を最大限に見せつけた。
横暴で鮮烈な彼の滑りを、Aはスクリーン越しにじっと見つめる。
意識を深く沈めると、いつも映画館のようなところで目を覚ます。
そして、表にいる自分の様子を見るのだ。
(
役の具現化をすると、よく多重人格なのかと聞かれることがある。
しかしAは多重人格者などではなく、ただ単純に役を演じているだけ。
少しばかり役に入り込みすぎなだけで、役になっている間の記憶もある。
(いつか僕が滑れなくなったら、俳優にでもなろうかな?)
その気もないことを考えながらも、待ち続けた。
ここから連れ出してくれる誰かのぬくもりを。
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るろまる(プロフ) - フィーアさん、コメントありがとうございます。ノンビリですが更新していきたいと思っています! 感想、とても嬉しかったです! (2017年1月12日 12時) (レス) id: 6d0c896ab0 (このIDを非表示/違反報告)
フィーア - とても面白かったです!!!更新頑張ってください!! (2017年1月9日 17時) (レス) id: 65845fd388 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:るろまる | 作成日時:2016年12月11日 22時