第１４話 視線 ページ16
ヴィクトルside
(『先生』・・・・・か。)
倒れる直前の発言を思い出し、眉をひそめる。
ゆーとぴあかつきの布団の上でぐったりとしたAを見つめた。
(傷つけないと誓った俺が、Aのパンドラの箱を開けてしまうとは・・・。)
激しい後悔の炎が、胸をじりじりと焼く。
(それにしても、Aがなれない役は、やはりアレか。)
先ほどの滑りは、曲の途中から体の軸がブレていた。
普段の状態のAでは、まずあり得ない。
終わった後の様子から考えて、意識が朦朧としていたのだろう。
それでも、俺が触れるまで役になったままだった。
(あんなになってもなお『役になりきる』ことにこだわるのは、『先生』の教育の賜物だな。)
心中で、皮肉げな笑みを浮かべた。
後悔の炎が消えていき、嫉妬と憎悪が滲みでる。
(あんたは、いつまでAの心に居座るんだ！)
潔白で柔いAの心を土足で踏み荒らし、黒々としたマイナスの感情を植え込んだ相手の顔を思い浮かべた。
心中で殺伐とした感情を持て余していると、先ほどから心配そうにしていた勇利たちが声をかけてきた。
「Aさん、大丈夫かな・・・？」
その問いに、大丈夫だ、とは言えなかった。
気品溢れる美しさと、思慮深く穏やかな性格。
しかし心の中は、徹底的な自己否定が渦巻いている。
きっと彼は今、そうなった原因である、あの時の夢を見ているだろう。
「なんで倒れたか、ヴィクトルは分かってるんだろ？」
「ああ、分かってるさ。」
「それなら、その理由を教えてくれよ。」
「僕もAさんの身に、なにが起こったのか知りたい。」
じっと2人の目を見つめる。
その目に、好奇心は無かった。
「どうしてそこまで彼にこだわる？
特にユリオは、今日初めて会ったばかりだろう。」
深入りするな、知って何になる、と言外に伝える。
「確かにそうだな。
それでも、さっきのを見てこれだけは分かった。
Aは、辛い過去がある。
それも、今でも乗り越えられていないほど大きなものが。
今回、Aとは数週間しか一緒に練習できない。
知らず知らずの内の行動や発言で、Aを傷つけたくないんだ。」
真摯な視線に貫かれ、俺は降参を表した。
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るろまる(プロフ) - フィーアさん、コメントありがとうございます。ノンビリですが更新していきたいと思っています！ 感想、とても嬉しかったです！ (2017年1月12日 12時) (
レス) id: 6d0c896ab0 (このIDを非表示/違反報告)
フィーア - とても面白かったです！！！更新頑張ってください！！ (2017年1月9日 17時) (レス) id: 65845fd388 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：るろまる | 作成日時：2016年12月11日 22時
