検索窓
今日:6 hit、昨日:1 hit、合計:55,998 hit

第10話 重圧 ページ12

ユーリside


「君の名前は?」

いつもの俺なら、こんな質問をされたら「ジュニア時代からの俺の華々しい功績を見ていないのか。」と怒るのだろうと他人事のように考える。




心に波風が立たないのは、非の打ち所の無い演技をしておいて、それを鼻にかけるようなそぶりを見せないからだ。




自分がもしあんなにも高レベルの演技を滑り切ることができたなら、周囲に自慢してまわるだろうに。



そう考えると、自分と目の前に立つ卯月Aとの差を自覚せざるをえない。





「ユーリ・プリセツキーだ。」





「君がユーリくんか。


確か、ロシアの妖精って呼ばれてたよね?」







(俺を知っていたのか!)





胸を占めていた劣等感が吹き飛んだ。




「そうだ。









あんたは、『鏡の国の天上人』だっけ?」








「そうだね。




ふふっ。



マスメディアも面白い名称をつけるよね。」









『鏡の国の天上人』





鏡とは、映りこんだものを反射する氷とかけた意味だけではない。





卯月Aが役そのものになる様子を、まるで写し鏡のようだ、という2つの意味を持つ。




また、グランプリファイナルでリンク全体を国に見たて、それを支配する王様を演じたことも影響している。





技術の高さや容姿の美しさが、人間とは思えないとしてそう名付けられた。






(俺には、ふさわしい名だと思うけどな。)


どこが面白いのだろう、と首をひねると、Aは心の中を覗いたようにその笑みを深くした。





「ユーリくんの『妖精』は分かるよ。


外見からしてそう見えるもの。









でも、『天上人』ってまるで僕が人間じゃないみたいでしょう?






僕だってお腹が減れば食べるし、眠ければ寝る、どこにでもいる人間なのにね。」








瞳の中に、呆れと少しの悲しみを見つけて愕然とした。









テレビ画面や写真の向こう側だけでなく、同じ立場の選手の間にも伝わる通り名。





俺たちはその意味を理解した上で、肩の上にのしかかる期待の重みに耐え続けなければならない。







それが、Aの場合は重すぎたのだ。



俺の『ロシアの妖精』とは比べ物にならないほどに。





それを理解した上で、かける言葉が見つからない。


Aは先ほどまでの表情を消し、にこやかに笑った。








「な〜んてね。






別に僕はどう呼ばれようが、僕であることに変わりはないからどうだっていいけど。」

第11話 意思→←第9話 交代



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (113 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
215人がお気に入り
設定タグ:ユーリ!!!onICE , YOI , 男主   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

るろまる(プロフ) - フィーアさん、コメントありがとうございます。ノンビリですが更新していきたいと思っています! 感想、とても嬉しかったです! (2017年1月12日 12時) (レス) id: 6d0c896ab0 (このIDを非表示/違反報告)
フィーア - とても面白かったです!!!更新頑張ってください!! (2017年1月9日 17時) (レス) id: 65845fd388 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:るろまる | 作成日時:2016年12月11日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。