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「…ねえ、えいちゃん」
「……。」
「えいちゃんってば」
「なに」
「なんで、場所、」
「そらに聞いた」
「あ…そっか」
そらにはカラオケの動画を送ったんだった。とは言っても、えいちゃんはわざわざこんな時間にタクシーで来てくれたんだろうか。渋谷からかなり近い場所には住んでるけど、さすがに歩いては来れないし、車もない。
終始話そうとしないえいちゃんの背中を眺めながら、不安で胸がいっぱいになる。私、またえいちゃんを怒らせたのかな。
マスクもせず、真っ赤な髪もそのままだから、いくら深夜の渋谷といっても、その姿はよく目立った。
えいちゃんはそんなこと気にもとめてないかのように、私の手をぎゅっと握ったまま歩き続ける。行動や言葉はぶっきらぼうなのに、私の手を握るその手はとても暖かくて、優しい。
やがてタクシーに乗り込むと、これまたぶっきらぼうにうちの住所を告げる。
家に着くまでの間、ずっと無言だった。
手はずっと握ったまま。
＊＊＊
やっとえいちゃんが口を聞いてくれたのは、家に着いて、シャワーを浴びた私が脱衣所から出た時。廊下でばったり出くわした彼は、すれ違いざまにこう言った。
「…女の子なんだからさ、もっと早く帰ってきなよ。みんな心配してたよ」
それはいつしかりっくんが私を叱ってくれた時の目とよく似ていて。
そういえば、この男達は心配性で私が友達と出かけるといつも帰りの時間を気にしていた。彼ら以外と出かけることがここ最近なかったから忘れていたけど、いつだったそらが「親から離れてる分、俺たちがAを守ってあげないといけないでしょ」って笑って言ってたっけ。
えいちゃんも、そんな気持ちだったのかな。
「えいちゃん…、心配かけてごめんね。今日は来てくれてありがとう」
「……ごめん。やっぱ嘘」
「えっ？」
「みんながAを心配してるようなそんな気持ちで今日行ったんじゃない。完全に俺の独断」
そういうと、えいちゃんは私の手を少し引いて、私の肩にゆっくりと自身の額を当てる。
「他の男に触られてたりしたらやだなって思った」
今ここには二人しかいないのに、それは私にだけ聞こえるような小さな声で。
えいちゃん、それって…、
「…“どういう”意味？」
「そのままの意味だよ(笑)」
「いてっ」
パッと顔を上げたかと思うと、額に走る小さな痛み。
「早く寝な。おやすみ」
教えてくれないくせに、そんなの、
ずるいよえいちゃん。
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月海(gekka)(プロフ) - ファンさん» こちらこそ、ステキなコメントをありがとうございます。リアルさと分かりやすさを意識して書いていたので、それが伝わったようでとても嬉しいです。愛の深い方だなんて恐縮ですが、これからもそんな作品を作っていきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いします (2019年4月15日 7時) (
レス) id: ef1778982a (このIDを非表示/違反報告)
ファン - おつかれさまでした！描写がお上手で、みんなの表情とか動きが鮮明に想像できて、読んでて本当に幸せでした。あとがき読みましたけど、月海さんこそ愛の深い方だなと、それにそれを表現する力をお持ちの方だなと感じます。。！ステキな作品をありがとうございました！ (2019年4月14日 10時) (レス) id: 48cd0ac296 (このIDを非表示/違反報告)
月海(gekka)(プロフ) - いずさん» お返事遅くなってしまいすみません！イメージしやすいような文章を意識しているので、読みやすいと言っていただけてとても嬉しいです！もう少しで終わってしまいますが、最新話も楽しんでいただけると幸いです。 (2019年3月24日 22時) (レス) id: ef1778982a (このIDを非表示/違反報告)
いず - 月海(gekka)さん» ストーリーの書き方など、とても読みやすくて夢中になっちゃいます。これからも更新楽しみに待ってます！ (2019年3月21日 23時) (レス) id: 50d70a4755 (このIDを非表示/違反報告)
月海(gekka)(プロフ) - まっ茶さん» ありがとうございます。最新話も楽しんでいただけると幸いです。 (2019年3月21日 13時) (レス) id: ef1778982a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：月海 | 作成日時：2019年3月4日 18時
