5-5 ページ21
あれから、数年が過ぎた。
約束の期限が過ぎ引退するというイッコーさんに変わり、俺がオーナーになった。
店は派遣ホストまがいの仕事を止め、すっかり健全な便利屋の様相を呈している。
こう見えても事務員だって一人いるし。
夜の仕事がなくなった分収入は激減したけど、和くんのお金が店を支えてくれた。
今ではそこそこ軌道に乗ったし。
正々堂々、和くんを待てるって気になってる。
軽やかにベルが鳴った。
「はい。何でも承ります、一光商会でーす。
え？
すみません、うち間口が狭いんで、入らないかもです。
はぁ。
お電話でもご依頼できますけど？
ええ、場所は昔のまんまです。
はい、お待ちしてまーす。」
「おーのさーん！」
電話が終わったとたん、俺はすぐさま事務員を注意する。
「なんすか？」
「なんすかじゃない。電話の応対はきちんと丁寧にって言ってるだろ。」
ホスト崩れの事務員は口を尖らせる。
「ええ？割りとちゃんとしてると思ってんすけど。」
いやいや、前よかマシだけど、まだまだ不合格！もう一度研修からやりなおすか？ん？
「あ、そうだ。社長の指名が入りましたよ。」
こいつ、本当に懲りてないな。ご指名入りましたじゃないよ。
「何時に？どこ？お名前は？」
「14時に来店です。お名前は・・・あ・・・」
こいつ、未だにこういうところあるよなぁ。
「すみませ〜ん。
なんか、車イスに乗ってる方みたいです。
電話でも大丈夫って言ったんですけど、来たいんですって。
物好きですよね。
で、オーナー。ここ、車椅子、無理っすよね。迎えに出ましょうか？」
「や、お前、配達の仕事あるだろ。何とかするよ。」
イッコーさんが若い頃のまんまだと言っていたこの事務所。
昭和を色濃く残してる所は好きなんだけどね。
「やっぱ、バリアフリー仕様にしないとヤバいかなぁ。」
っと、そろそろ時間だ。
外向きの扉を開け放つと、そこには体格のいい男性が立っていた。
ノックしようとした腕が宙に浮いており、片腕は小柄な男子を抱いていた。
淡い瞳。
白い肌。
もう一度会いたいと願っていた人がそこにいた。
穴が開くほど見つめて。
消え失せないのを確認しても、体は金縛りに合ったように動けない。
和くんはソファにそっと下ろされた。
「あいちゃん。ただいま。」
見上げたその瞳も笑顔も何も変わってなくて。
おずおずと差し出された両手。
俺はその薄い体をしっかりと抱きしめる。
おしまい
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 149人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ねこにゃん(プロフ) - あんずさん» あんずさん、こんにちは。コメントありがとうございます。しょにの。ﾊﾜｲﾌﾞﾗｽﾄの二人が並んで座っているというだけで想像が膨らんでいきました(////v////) 珍しくリーダーがたくさん話していたのも良かったですよね〜 (2020年3月23日 12時) (
レス) id: 3517159278 (このIDを非表示/違反報告)
ちえさん(プロフ) - あんずさん» あんずさん、こんにちは。ね。プラスワンとゲストチームに助けられてましたよね。でも、あんなに隠せないのは珍しいと思いました。メンバーには感謝しかないです。コメントありがとうございます(*´∀｀) (2020年3月23日 9時) (レス) id: 1d9f1ca27f (このIDを非表示/違反報告)
あんず(プロフ) - この日は本当に具合悪そうでかわいそ可愛かったですね…(；；) 痛みで食事も取れないの可哀想… プラスワンが慣れた人で本当によかったです。認めて支えてくれる4人はやっぱり素敵ですね。 (2020年3月23日 0時) (レス) id: b23ea6b68a (このIDを非表示/違反報告)
ちえさん(プロフ) - ねこにゃんさん» ねこにゃんさん！コメントありがとー。楽しかったですよねぇ。是非ともまたお願いします！(//∇//) (2020年3月13日 15時) (レス) id: 1d9f1ca27f (このIDを非表示/違反報告)
ねこにゃん(プロフ) - ちえさん。初めての共同執筆（になるのか？？）楽しかったで〜す。機会があれば、またやりましょうね〜♪ (2020年3月13日 12時) (レス) id: 3517159278 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちえさん&ねこにゃん
| 作成日時：2019年12月11日 21時
