炎ノ針子【弐】

鬼灯-6 ページ19

「さて、と…今年も賑わってますね〜……面倒な。」

私は襷で着物の裾を上げると薙刀の柄を握る。
炎の刃は使えないため、棒術での応戦になるが、まだ大丈夫だろう。
ここ最近参加できていなかったせいか、今年の参加者は多く見える。人が恋心を自覚した途端これである。少しは人の気持ちを察して遠慮してほしい。
私は溜め息をつくと紅の場所を確認するため、軽く周りを見る。紅は女性相手になると攻撃ができなくなるので(紺兄の女は大事にしろ。という教えの為)、毎年逃げに徹しており私が紅のところに辿り着くか、はたまたその逆でこの茶番は終了となる。
あ。見付けたけど、意外と離れた場所にいるな…。
私は一度炎の刃を出すと紅に居場所を伝えるため、地面めがけて刃を振り落とす。

「炎武・火柱！」

爆音と共に青い炎の柱が立ち上がる。私は怪我人が出ない内に炎をかき消す。
余波で何人か吹き飛んだようだが、まぁ結果オーライで。
よし、これで私の位置は伝わっただろう。

「では、参りましょうか…。私の目的のために、倒れていただきます。悪くは思わないでくださいね？AA、参ります！」

ざっと踏み込み、横に薙いで周りにいた人たちを遠心力で吹き飛ばす。
えっと、紅がいたのはあっちの方角か…。
私の目線の動きで目的を察したのか、後ろで人が動く気配がした。
素早くしゃがみ、柄で足払いしそのまま上へ突き上げる。
あ。顎にヒットしたみたい…ごめんなさい。
その間に正面から間合いを詰めてきた人を交わし、その方の背中をお借りして飛び上がる。
着地地点に人が集まる。

「Aちゃん！俺と一緒に…！」
「お断りいたします！」

申し訳ないけど、その方の顔面を踏みつけもう一度飛ぶ。
わらわらと次から次へと…。

「Aちゃん！好きだーーーーー！！！！」
「お断りし、ま、すっ！！！」

踏みつけられないように。と空いた空間に着地し、素早く柄で前から突進してきた方のお腹を突く。
遠慮なんかしてたら潰れるわ…。あ、この人大きいから倒れにくいな…。
私は柄を引き抜くと、足運びでお腹を突いた方の後ろに回り、背を力一杯蹴り飛ばす。蹴った方向にいた方々が良い感じで倒れていった。

「今年ばかりは余り邪魔をしていただきたくないんですが…」
「いやぁ、今年で最後になるかもしれないって風の噂で聞いたもんだから、最後に良い思い出というか…玉砕しておこうかなって思って」

私がやれやれ。と肩を竦めると、正面にいた方が答えてくれる。

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