巻き返し-3 ページ1
「A!大丈夫か!?」
「紅!」
「「だからおせェんだって!若ァ!!」」
「あーあー文句なら受け付けてねェぞ」
紅が通りの向こうから走ってきた。
誰かを探していた様子だが、私を探していたのだろうか?
紅は双子に遅いと怒られていたが、めんどくせぇ、と流していた。
そんないつものやり取りに和んでいると、双子の口から爆弾が飛び出した。
「受け付けてねェじゃねーよ!」
「若が遅いせェで、Aがデエトに誘われちまったじゃねーか!」
「わわっ!ヒカゲ、ヒナタ!ストップストップ!!」
私が慌てて箱を小脇に抱え、双子の口を塞いだが時すでに遅し。
恐ろしいほど鋭い視線が私に突き刺さった。
流石の私でもこの視線は物凄く怒ってるって分かる。しかも、普段紅は私にこういう感情は向けないようにしているのだが、今回はそうもいかないらしい。
だけど、私に向けられても困る。
「紅?」
「……行くのか?」
「そりゃ行くよ。第一デエトではないし、只食事に誘われただけだもの」
「俺が行くな、って言ってもか?」
「今回は悪いけど、紅の言うこと聞けない。これはA呉服の問題だし、仕事の話だから」
だから、ごめん。と私が謝ると、紅は怒りをどこにぶつければ良いのか分からなくなったのか、勝手にしろと言って、浅草の喧騒に消えた。
何故私が怒りを向けられなくてはいけないのか。
私だって今回の件は体調を崩すくらい負担になってるし、この食事のお誘いだって行きたくて行くわけじゃない。
なのに…!
「A、どこか痛いのか?」
「え?」
「A、どこか怪我したのか?」
「大丈夫だよ?どこも怪我なんてしてないよ」
「「でも、A泣いてる」」
双子に指摘されて頬に手を伸ばし、そこが濡れていることが分かるといよいよ堪えきれなくなったのか、私は堰を切ったかのように泣き出してしまった。
自分の気持ちを紅に分かってもらえないのが、こんなに辛いだなんて。
紅に冷たい目で見られ、背を向けられただけでこんなに心細くなるなんて。
私は自分自身のことなのに、知らなかった。
知らなかったのだ。
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颯(プロフ) - カニカマさん» 間違った読みで覚えてしまっていたみたいでお恥ずかしい限りです。現在は私生活が忙しく、趣味も執筆も妄想も捗らず、歯がゆい思いをしているのですが、いろいろ落ち着きましたらまたゆっくりマイペースに書いていきたいと思います。この度は誠にありがとうございました (2020年12月25日 0時) (レス) id: 0be6f2aa57 (このIDを非表示/違反報告)
颯(プロフ) - カニカマさん» 初めまして。誤字のご報告、誠にありがとうございます。また、お返事が遅くなり大変申し訳ありません。ご指摘頂きました鬼灯ですが、「ほおずき」に先程全て修正いたしました。とても助かりました。本当にありがとうございます!携帯の予測変換で変換していた為、 (2020年12月25日 0時) (レス) id: 0be6f2aa57 (このIDを非表示/違反報告)
カニカマ(プロフ) - いつも楽しく拝読させていただいております。これからもご活躍を切にお祈りしております。 (2020年11月14日 9時) (レス) id: aef0ed3227 (このIDを非表示/違反報告)
カニカマ(プロフ) - 題名で漢字変換もされており、文章でも繰り返し用いられているので「わざとかな?」とも思ったのですが、「変換できなくて『鬼』と『灯』で分けて変換してるという可能性もあるのでは」と思い至り、報告させて戴きました。 (2020年11月14日 9時) (レス) id: aef0ed3227 (このIDを非表示/違反報告)
カニカマ(プロフ) - 炎ノ針子【弍】『鬼灯-1』夕夏の台詞の上から二行目に当たる文章の中で「ほうずき」とありますが、正しくは「ほおずき」です。 (2020年11月14日 9時) (レス) id: aef0ed3227 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:颯 | 作成日時:2019年11月12日 17時