朝の喧騒-7 ページ9
近年、この蛇口というものが出来てからこういう水仕事がやり易くなったな。と思う。
浅草にはまだ井戸も残っていて、紅は夏になるとよく水浴びをしているが、力がない私的には水を汲み上げるだけでも精一杯なので、本当に蛇口を開発した人ありがとう。
「紺兄、お茶濃くない？」
「いや、丁度いい濃さだよ」
「そう。それはよかった」
「お前ェ、紺炉には聞いて俺には聞かねェとは…」
「紅のお茶は濃いめ」
「……」
「間違えてるとは言わせない」
泡のついたスポンジでお皿の汚れを取りながら水で濯ぐ。
油汚れがきっちりと落ちていることを確認し、水切り台に置いていく。
水を使っていると周りの音が聞き取りづらくなるが、紺兄と紅は少し大きな声で話し掛けてくれるから助かる。
「ははっ。すっかり尻にひかれやしたな、若ァ」
「うっせェ…」
「で、あの簪はどこで？」
「………」
「Aなら水の音で聞こえやしやせんよ」
「…三丁目の硝子細工のジジィには前々から相談しててな…そこに最近浅草に来たアイツがいい硝子を卸して簪に仕立ててくれたんだよ」
「嗚呼、銀二でしたか？」
「そんな名前だったなァ…」
「若ァ、またそんなこと言って…。しかし考えましたなァ…紅と蒼なんて」
「………」
「Aは意味を知らないんだろ？早い内に…後悔しない内に伝えた方がいい」
「分かってる」
「紺兄、洗い物終わったけど他に手伝うことは？」
「ぁ、嗚呼、ありがとう。他は特にねぇが…」
「見回り行ってくらァ」
「「………」」
洗い物が終わったので手を拭きながら、暖簾を上げて紺兄に他に仕事はないか尋ねているとどこか拗ねたような声色で紅が立ち上がる。
私と紺兄が顔を見合わせてる間も紅はスタスタと歩いていく。
私たちは互いに苦笑すると口を開く。
「A、頼めるか？」
「分かりました」
そして手拭いを紺兄に渡すと、私は昔に比べると幾分も大きくなった紅の背中を追った。
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颯(プロフ) - ナツさん» コメントありがとうございます。残念ながら、私も別サイトにて夢を書いている者ではございますが、お探しの方ではなく大変申し訳ありません。ですが、そんな方とお間違えいただけるとは光栄でございます。引き続きお楽しみ頂ければ幸いです。 (2020年1月2日 11時) (
レス) id: 0be6f2aa57 (このIDを非表示/違反報告)
ナツ(プロフ) - はじめまして。楽しく読ませていただきました。人違いだったらたいへん申し訳ないのですが、もしかしてかつて別サイトでハリーポッターやナルトやハンターハンターの夢小説を書かれていた方でしょうか。 (2020年1月1日 15時) (レス) id: 8cabdf3766 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：颯 | 作成日時：2019年11月1日 0時
