朝の喧騒-4 ページ6
「ふぅ…ここまでびっちりと紋縫いしとけば暫くは大丈夫でしょう」
つい興が乗ってしまい、上着のあちらこちらに紋縫いを施してしまった。
紋縫いは炎を通した糸を使用するため目視は難しく、一見すると何てことない只の服なのだから便利なものだ。
「おィ、A。そろそろさみィ…上着寄越せ」
「あ、紅。お帰りなさいってまた髪も拭かずに出て来て…！畳に湿気は大敵なんだから気を付けてよね」
「紺炉みたいなことを言うなァ」
「まぁ、紅に対するお小言は紺兄の受け売りだからね。仕方ない」
私は紅に上着を渡すと、代わりに首に巻かれていたタオルを抜き取り、紅の後ろに回る。
毎日なんだかんだしっかりと櫛を通しているからか、女の私ですら嫉妬するようなサラサラ具合である。
髪の水分をタオルに移すようにしっかりとタオルブローをしていく。
「ヒカゲとヒナタは？」
「風呂の前に結っといた。今頃はどっか遊びにいってんだろ」
「そう。」
「双子にもお前ェと同じ事を言われた」
「嗚呼。若、酒くせェ！寄んな！って感じ？」
「まんまその通りでェ」
流石に傷付いた。とばかりにしょんぼりする、少し可愛い背中にそっかそっか。お酒も程々にしないとね。と返す。
第7の大隊長という立場を背負い、浅草を大事に思う優しい優しい私の幼馴染みは、その口調とは裏腹に意外と繊細なのである。
「まだかァ？」
「ん〜…まぁいいかな」
はい。と髪を一撫でして立ち上がろうとすると、着物の袖を引かれた。
視線だけ向けると、座れ。と言われたのでもう一度その場に座る。
今度は紅が私の後ろに回り、私の髪を優しく鋤く。
「紅？」
「今日の礼だァ。大人しく前ェ向いとけ」
「えー。私、いい加減お腹空いたんですけど」
「飯なら取ってらァ」
「…なるべく最速で」
「無理な相談だなァ」
くっくっ。と笑った紅は器用に私の髪を束にして結い上げていく。
紅は私の髪を弄るのが好きなのか、いつも凝った結びになる。
さて…今日はどうなるかなぁ…。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 358人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
颯(プロフ) - ナツさん» コメントありがとうございます。残念ながら、私も別サイトにて夢を書いている者ではございますが、お探しの方ではなく大変申し訳ありません。ですが、そんな方とお間違えいただけるとは光栄でございます。引き続きお楽しみ頂ければ幸いです。 (2020年1月2日 11時) (
レス) id: 0be6f2aa57 (このIDを非表示/違反報告)
ナツ(プロフ) - はじめまして。楽しく読ませていただきました。人違いだったらたいへん申し訳ないのですが、もしかしてかつて別サイトでハリーポッターやナルトやハンターハンターの夢小説を書かれていた方でしょうか。 (2020年1月1日 15時) (レス) id: 8cabdf3766 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：颯 | 作成日時：2019年11月1日 0時
