針子の仕事-7 ページ27
道ができたことを確認し、有紗さんを迎えに行こうとすると紺兄が連れてきてくれていた。本当に至れり尽くせりである。
紺兄にありがとう。と言うと有紗さんのベールを下ろす。
本来ベールを下ろすのは親族の方、ベールを上げるのは伴侶となる方と決まっているらしいが、今回は特別に私が下ろさせていただいた。
「有紗さん、銀二さんの元へ…足元だけは本当に気を付けてくださいね」
有紗さんは頷くと、両手で扇を持ち、静々と歩き出した。
私は有紗さんが転ばないか固唾を飲んで見守る。
「………綺麗だ」
「嗚呼、とても」
「素敵ね……」
どこからかポツリ、と零れ落ちるように称賛の言葉があがる。
皆、静かに有紗さんを綺麗、と称える。
誰かが、ああいう衣装もいいもんだね。と私も着たいわと言ってくれる。
私はとても誇らしくなった。銀二さんのために、と有紗さんが私に依頼してくれた花嫁衣装は、浅草の皆を惹き付ける素敵なものとなった。
ゆっくりゆっくり、一歩一歩踏み締めるように有紗さんは歩いていく。
誰かが贈ったお酒の染みが残る隣に立った有紗さんはゆっくりと振り返り、トレーンを整えると美しく一礼した。
「この度は、私の夫・銀二のためにお集まり頂き、誠にありがとうございます。妻の有紗でございます。少し長くはなりますが、私の話を聞いてください。」
皆の視線が有紗さんに集まり、頷く。
有紗さんは銀二さんとの出会い、銀二さんの癖や失敗談、そして、浅草の皆に向かい入れてもらえた夜、どれ程嬉しがっていたかを語ってくれた。
「銀二を浅草の一員に加わえてくださり、本当にありがとうございました。また、浅草の民として鎮魂してくれた紅丸さんもありがとう…。銀二の代わりに私がお礼させていただきます。きっと銀二は…銀二さんは…幸せに笑っていると思います。」
そう言って、有紗さんはベール越しにも分かる程それは綺麗に、微笑んだ。
その時、風が強く吹きベールを巻き上げる。
私は今だ、と思い自身の発火能力を使用する。
ベールに紋縫いを用いて縫い付けてあった私の炎を通した銀二さんの灰を青く燃え上がらせる。
キラキラと青い炎を揺らめかせながらベールは宙へと上がり、燃えていく。
これが私にできる最高の弔いだ。
どうか、銀二さんが願ったように、有紗さんのこれからが幸せなものになりますように。そう、祈りを込めて。
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颯(プロフ) - ナツさん» コメントありがとうございます。残念ながら、私も別サイトにて夢を書いている者ではございますが、お探しの方ではなく大変申し訳ありません。ですが、そんな方とお間違えいただけるとは光栄でございます。引き続きお楽しみ頂ければ幸いです。 (2020年1月2日 11時) (
レス) id: 0be6f2aa57 (このIDを非表示/違反報告)
ナツ(プロフ) - はじめまして。楽しく読ませていただきました。人違いだったらたいへん申し訳ないのですが、もしかしてかつて別サイトでハリーポッターやナルトやハンターハンターの夢小説を書かれていた方でしょうか。 (2020年1月1日 15時) (レス) id: 8cabdf3766 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：颯 | 作成日時：2019年11月1日 0時
