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彼は背が高く手足もスラリと長い。ダンスも上手で、そして何より朔間家の立派な当主様だ。
これで吸血鬼という噂がなければ、女性が放っておかないだろう、というのが世間の母親たちの見解だ。
噂を抜きにすれば後妻に入っても申し分ない、と。
心も無垢のままのAは良くも悪くもそのような利害の事は考えていなくて、だからこそ彼の目にとまったのだ。
(人の子の考えていることなどお見通しじゃわい。浅はかで美しいのう)
けれど、彼女は少し違うようだ。あまりにも綺麗なのだ。
無垢で、純粋で、何も知らない。考えがあって母親の指示に従っているのではない、そうするしかないと諦めているのでもない。
無色透明なガラスが、向こうの世界を移すのと同じように。
曲が終わると、朔間零は彼女をテラスへ連れ出す。満月の夜だった。冷たい空気が、頬に心地いい。
Aが振り返ると、そこに彼はいなかった。
(不思議な人ね)
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さなえ(プロフ) - フラッペさん» コメントありがとうございます。お褒めに預かり光栄です。細かいところにこだわって書いてみました。 (2018年8月18日 16時) (レス) id: b33fb32224 (このIDを非表示/違反報告)
フラッペ - お話の内容が濃くて私的には面白い物語でした。こういう細かな文章が好きで、なんか一つ一つに感情がこもっているというか……まぁ、とにかく良い話でした。 (2018年8月16日 1時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さなえ@Love伊織 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/sanaeHome/
作成日時:2017年7月29日 16時